酒の肴に野球の記録BACK NUMBER

「じつは“飛ばないバット以前”より成績アップ」甲子園の新規格バット2年目…1本3万円超は「高いよ、との声も」高野連が酷暑問題とともに語る

posted2025/08/05 06:01

 
「じつは“飛ばないバット以前”より成績アップ」甲子園の新規格バット2年目…1本3万円超は「高いよ、との声も」高野連が酷暑問題とともに語る<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2025年センバツ優勝校となった横浜。この大会の打撃データを見ると、新規格バット2年目の興味深い傾向が見えた

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

飛ばなくなった新規格の金属バットに酷暑対策、7回制にDH制……高校野球界の改革を実行する側が語ったリアルな本音とは? 夏の甲子園を前に日本高野連へ直撃取材した。〈NumberWebレポート/全4回。第3回につづく〉

新規格バット2年目…センバツでは打撃成績が上がった

 高校野球は2024年春から新規格のバットを導入した。決定に至るまでの経緯、導入後の打撃成績は第1回に記した通りだが――2年目となる2025年のセンバツでは興味深いデータが浮かび上がってきた。得点の後ろのカッコは両チームの1試合平均得点数。

【センバツ】
2025年/第97回大会:31試合
285得点(9.19)打率.270長打率.370
6本塁打259打点53盗塁155犠打

 ここであらためて新規格バット導入前の2023年、そして導入1年目の2024年の春夏甲子園の成績を並べてみよう。

ADVERTISEMENT

2023年/第95回大会:35試合
245得点(7.00)打率.256長打率.317
12本塁打214打点67盗塁130犠打

2024年/第96回大会:31試合
200得点(6.45)打率.233長打率.286
3本塁打168打点72盗塁137犠打

【選手権大会】
2024年/第106回大会:48試合
308得点(6.42)打率.253長打率.300
7本塁打270打点83盗塁198犠打

 得点は、新規格バット導入1年目の24年を大きく上回り導入前の23年よりも多かった。打率、長打率、本塁打、打点も24年を上回り、反対に盗塁は減少した。試合数が多い選手権大会と比べても、1試合当たりの得点数、打率、長打率は上がっている。

「このバットでしっかり振り抜く練習をしたい」

 こう語る高校野球の指導者が多かったことを証明する結果といえよう。

名将も「打撃そのものが随分変わっている」

 日本高等学校野球連盟の寶馨(たから・かおる)会長は、選抜大会後の講評で「新基準バットに慣れてきて得点力が上がってきたのだと思います」と積極的に評価したが、「R規格」の金属バットの導入を担当した日本高野連の古谷純一事務局次長も、このように語る。

「昨春の大会では、外野手の守備位置が非常に前に出ていまして、ここまで変わるかという印象を持ちました。去年の夏も含めてそういう傾向はあったのですが、今春、外野手は定位置に近いところに守っていたので、かなり慣れてきたのかな、という印象を私も持っています」

 甲子園に出場するレベルの高校生が、「R規格」の金属バットに適応しつつあることを、事務局としても感じているのだ。

【次ページ】 名将も「打撃そのものが随分変わっている」

1 2 3 NEXT
#高野連
#小倉全由
#寶馨
#古谷純一

高校野球の前後の記事

ページトップ