酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「極論だと“夏実施をやめる”となりますが」酷暑の高校野球…高野連が悩む現場のリアル「地方大会は冷風機、扇風機の取り合いになるようで」
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/05 06:02
2023年夏の甲子園で、チームメートの首を冷やす慶応の清原勝児(当時)
確か101回大会(2019年)から、甲子園球場のアルプススタンドの中に小さな部屋があるのですが、ここを臨時の休憩所にして、塩分補給のタブレットやドリンクなどを置いて、しんどくなる人に使ってもらうようにしました。本当に救護室に行って診察してもらわないといけなくなる手前の段階の人に、一息ついてもらって回復してもらうような目的ですね。
応援団の方に限ってはいますが、吹奏楽部の人なら5回のクーリングタイムにそこにいってもらうなどの対策もしています」
――甲子園球場では、銀傘(屋根)がアルプススタンドまで拡張する工事が決まりました。
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「3年先の話ですが、これによって応援席の6割くらいはカバーできると思います。
ただ、野球部の控え選手を中心とした応援団は暑さに慣れていますが、甲子園出場が決まって『さあ、応援に行こう』とやってきている一般の方が厳しいですね。今の時代、生まれたときからクーラーなど空調設備があるのが当たり前の生活をしている方が多くなっている中、猛暑の中で応援することになりますから。暑さ対策をしっかりして、応援していただきたいと思っています」
地方大会…冷風機、扇風機は取り合いになるようで
――地方大会は日本高野連ではなく各都道府県の高野連の主催試合だが、地方大会でも厳しい暑さへの対応に苦慮しています。日本高野連として、都道府県高野連に呼び掛けたりはしていないのでしょうか?
「暑さが厳しくなった数年前からは、都道府県大会も厳しくなっていますが、甲子園でやっていることを都道府県でそのままできないと思います。また都道府県によっても意識の差があります。
ただ数年前から、各地方でこういう『暑さ対策』をしていますという情報を資料にして配布しています。情報共有を進めているんですね。あと、大会で出る剰余金の中から、各都道府県に暑さ対策へ向けた助成をしています。
今、都道府県の選手権大会をやっている球場が約240~250ほどありますが、中には何の施設もない球場もあります。そういうところで『冷風機とか扇風機などを仮設でもいいので設置して、そのレンタル料に助成金を使ってください』という呼びかけはしています。
ただレンタルの冷風機、扇風機は取り合いになるようで、入手が難しかった地方もあったようですが」
凶暴な暑さの中で試合をしている現実については…
――地方大会ではいまだに、午後1時などカンカン照りの時間にプレーボールをしているところもあるのが現実です。

