酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「木製と大差ない」“飛ばない金属バット”高校野球指導者の多くは「つなぐ野球」を選ばず…「導入1年目の甲子園は急落した」打撃成績に異変
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/08/05 06:00
新規格バット導入1年目の2024年は木製バットを使用する球児がいた。2025年に入って高校野球界にはどんな傾向が見える?
【センバツ】
2023年/第95回大会:35試合
245得点(7.00)打率.256長打率.317
12本塁打214打点67盗塁130犠打
2024年/第96回大会:31試合
200得点(6.45)打率.233長打率.286
3本塁打168打点72盗塁137犠打
導入前の23年に比べて得点も打率も長打率も低下、本塁打数は12本から3本と激減、盗塁、犠打は微増だが、今後、スモールベースボールを象徴するこれらの指標が増えていくと予想された。
ADVERTISEMENT
では、夏の甲子園はどうだったのか?
【選手権大会】
2023年/第105回大会:48試合
455得点(9.48)打率.286長打率.363
23本塁打404打点97盗塁183犠打
2024年/第106回大会:48試合
308得点(6.42)打率.253長打率.300
7本塁打270打点83盗塁198犠打
例年、春よりも夏の方が打撃成績は向上する傾向にある。慶應義塾高が107年ぶりに優勝した23年夏も打率、長打率ともに春を大きく上回っていた。しかし新規格の金属バットになった24年は春同様、打率、長打率ともに大きく下落。本塁打数も23本から7本と3分の1以下になった。盗塁も減少、犠打は微増だった。
「やっと木製と大差ないバットになったのだから」
この結果から、今後も「打低」のトレンドが続くのではないかと思われた。金属バットの改正は、ひとまずは想定通りの効果を生んでいると考えられたのだが――。
昨秋から私学、公立のいろいろな指導者に「新たな金属バットへの対応策」を聞いて回ったのだが、意外なことに「球に逆らわない打撃」「転がす」「バントを多用する」など、飛ばないバットに対応した「スモールベースボール化」を目指すと答えた指導者はほとんどいなかった。
「新しい金属バットは芯を食わないと飛ばないけども、やっと木製バットと大差ないバットになったのだから、このバットでしっかり振り抜く練習をしたい」
こう答えた学校が大部分だった。またこれを機に、木製バットに持ち替えた高校生もいた。
つなぐ野球は少数派…センバツで興味深い結果が
高校野球の伝統と言える「つなぐ野球」「送る野球」を選択した学校は、少数派にとどまった印象だった。その結果、今春の甲子園、センバツでは興味深い数字の異変が現れることになった。〈つづく〉

