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「史上最高のスピーチだ」イチローの“ある発言”を米国記者4人が絶賛「マーリンズを聞いたことない…に笑ったね」「まさか英語で語るとは…」現地の反応
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水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/07/31 06:50
米野球殿堂入り式典でのイチローさんのスピーチが米国で絶賛されている
「野球殿堂入りスピーチの歴史の中でもベストの1つだったと思う。あんなふうにウィットに富んで面白いスピーチは聞いたことがない。オールスター戦のとき、クラブハウスで、英語でジョークを言ったりしているのは見たことがあったが、あれだけの内容を盛り込んでスピーチをまとめ上げ、それをすべて英語で語ることができるとは、まったく想像していなかった。話し方のパフォーマンスも素晴らしく、要所では表現力豊かに語り、大事なくだりや笑いをとりたいところではちょっと間をとって、ためを作って強調していた。スピーチの後の会見で、自分の目標は野球殿堂入りすることではなく人々を笑わせることだと言っていたが、彼はそれを確実に遂行していた」
マーリンズの発言に「笑ったね」
もう1人、フロリダ州のメディアであるブレイデントン・タイムズのドン・ライブル記者にも聞いてみた。フロリダといえば、イチローがメジャー3球団目として2015年から3年間所属したマーリンズがある州だ。スピーチの中でもマーリンズについて「最初にオファーをもらったとき、聞いたことのない球団だった」と言って聴衆を笑わせ、しかし能力のある若い選手が多くそろった良い雰囲気のチームだったこと、メジャー通算3000安打を達成した瞬間に祝福を受けたことが忘れられないことなど、思い出を振り返っていた。
「マーリンズを聞いたことのない球団だと言ったのには笑ったね。あのスピーチで、彼は面白い人物だということ、英語もうまいということを示したと思う。多くの人は彼が英語を話すのを聞いたことがなかった。彼の殿堂入りスピーチを見た多くの人は、新バージョンのイチローを見たということだ。そして妻がいかに重要な存在であるか、すでに殿堂入りしていた偉大な先輩たちの仲間入りをしたことがどれだけ重みのあることかを語ったのも好感を持てた。みんながイチローの知らなかった一面を知ることができたのは、とても良かったと思う」
実は、米国人記者たちにとって新鮮だったイチローの英語スピーチの内容のいくつかは、現役時代に取材をしてきた日本人記者にとってはすでに聞いているものもあった。例えばヤンキースで過ごした2年半について「デレク・ジーターの素晴らしいリーダーシップと誇り高い球団の文化を経験させてもらったことに感謝しています」とスピーチしたが、ジーター氏のリーダーシップをチームメートとして経験できたことは良かったと、現役中に話したことがあった。イチローの考えは、何年たってもブレていない。そのときどきで発してきた言葉は、思いつきや軽いものではなく深い思考に裏打ちされたものばかりだったのだと、改めて振り返る機会にもなったスピーチだった。

