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「マルケスにしか乗りこなせないマシン」とは? MotoGPで圧倒的な強さを発揮するマルク・マルケスとライバルたちの違い
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/07/30 17:00
前半の12戦で8勝を挙げ、すでにタイトル確実と言われるほど圧倒的な強さを発揮しているマルク・マルケス
バニャイアが25年型マシンで課題にしているのはブレーキングの安定性。しかし、ブレーキングの強さとクリッピングポイントまでの速さを武器にするマルケスを追撃しようとすると、どうしても過去に経験したことがない領域に入っていくことになる。マルケスの限界ギリギリのブレーキングからのコーナリングはリスクと隣合わせで、22年と23年のチャンピオンをもってしてもマルケスのように走れないのは仕方がないとも言える。
マルケスが所属するチームのマシンが「マルケスにしか乗りこなせないバイク」になっていくのは、彼が求めるレベルの高さが他のライダーたちにとっては「ピンポイントの性能」であり、ダッリーニャの「ホンダのバイクが常に乗りやすかったわけではないと思う」というコメントと一致する。
マルケスのホンダ時代にはダニ・ペドロサというバランスの取れたライダーがチームメートにいて、マルクとは違う仕様のバイクを好んだ。それがある時期、ホンダ勢の平均点の高さにつながっていたのだが、ドゥカティにもペドロサ的な存在がいれば状況が変わるはずだ。
マシンに合わせて走りを変える才能
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ホンダ時代のマルケスは、マシンをコントロールしようと常にバランスを取る「動」のライディングスタイルだった。ドゥカティ時代のいまはエアロの効果を最大限活かすためか、マシンの動きを邪魔しないようアクションの少ない「静」のスタイルに変わった。とはいえ、タイムを出すときの一発の走り、マシンの限界ギリギリの走りは、ホンダ時代よりも格段に迫力が増しているし、マルケスは進化するマシンに合った走りをいち早く見つける天才なのではないかと思う。
マルケスはこのまま快進撃を続け、7回目のタイトルを獲得することになるだろう。そうすると、彼に勝てない速いライダーたちがドゥカティ陣営から去って行くという現象が起こる。完全復活したマルケスは、MotoGP界の勢力図に大きな影響を与える存在として君臨している。
