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「マルケスにしか乗りこなせないマシン」とは? MotoGPで圧倒的な強さを発揮するマルク・マルケスとライバルたちの違い
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/07/30 17:00
前半の12戦で8勝を挙げ、すでにタイトル確実と言われるほど圧倒的な強さを発揮しているマルク・マルケス
マルケスの魅力はたくさんあるが、一番の凄さは転んでも再スタートする「諦めない」マインドにある。なんとしてもチェッカーを受けるという気迫はチームの気持ちをひとつにし、圧倒的な結果はますますチームの団結力を高めている。
2020年に右腕を骨折して長らく戦列を離れたときも、マルケスは復帰を諦めなかった。大好きな祖父に「たくさん勝ったしチャンピオンにもなった。お金もたくさん稼いだだろう。もうやめてもいいんじゃないか」と引退を勧められたとき、「おじいちゃん、もう一度だけチャンスをください」と答え、祖父に「いうことを聞かない子だね」と言われたやりとりは、よく知られるエピソードである。
マルケスのドゥカティワークス加入にあたっては、ひとつだけ懸念があった。それは過去、バレンティーノ・ロッシとの確執でイタリアを敵にしてしまったマルケスが、イタリア代表とも言えるドゥカティに溶け込めるかということ。だが、そんな心配は杞憂に終わり、いまや、ドゥカティはマルケスの最大の味方となった。今年のイタリアGPでは心ないファンからのマルケスへのブーイングに怒りのメッセージを送るほどで、ドゥカティがマルケスと強い信頼関係を築いていることを知らしめた。
マルケスが求めるピンポイントの性能
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マルケスが圧倒的な強さを発揮すると聞こえてくるのが、「マシンがマルケスにしか乗りこなせないハイレベルなスペックになる」という言説だ。実際、最大のライバルになると予想されたフランチェスコ・バニャイアはマルケスのあまりの速さに打ちのめされた格好で、今季ここまでわずか1勝。チャンピオン争いから大きく後退してしまった。
昨シーズン11勝を挙げたバニャイアは、25年型のマシンが自分の乗り方に合わず、24年型で今季総合2位につけているアレックス・マルケスのようなライディングができないとコメントしている。

