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「マルケスにしか乗りこなせないマシン」とは? MotoGPで圧倒的な強さを発揮するマルク・マルケスとライバルたちの違い

posted2025/07/30 17:00

 
「マルケスにしか乗りこなせないマシン」とは? MotoGPで圧倒的な強さを発揮するマルク・マルケスとライバルたちの違い<Number Web> photograph by Satoshi Endo

前半の12戦で8勝を挙げ、すでにタイトル確実と言われるほど圧倒的な強さを発揮しているマルク・マルケス

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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 MotoGPは第12戦チェコGPを終えて夏休みに突入したが、シーズン前半戦を席巻したのはマルク・マルケスだった。その圧倒的な速さの秘密にあらためて迫ってみたい。

 マルケスがドゥカティに乗り換えて2年。今季からはドゥカティワークスに移籍してマシンが最新型になり、チーム力が格段に上がったことも手伝って、とにかく速くて強い。どんな状況でも勝ってしまう。味方につけば最大の力となり、敵につけば最大の脅威となる存在であることを証明した。

 ドゥカティを最強のチームにした立役者であるゼネラルマネージャーのジジ・ダッリーニャは、マルケスの存在についてこう語っている。

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「我々が以前ホンダに勝てなかった理由のひとつは、マルク・マルケスというライダーがいたから。彼の存在は異常。ホンダのバイクが常に乗りやすかったわけではないと思うが、マルクがいればそういうことは問題ではなかったんだろう」

 マルケスがホンダからドゥカティのサテライトチーム、グレシーニに移籍した昨年の結果は総合3位。1年目からチャンピオン争いを期待されたが、天才をもってしてもそう簡単ではないように見えた。

 しかし、ドゥカティの評価は違った。1年落ちの23年型に乗って総合3位のマルケスと、最新24年型でチャンピオンに輝いたホルヘ・マルティンのどちらかをワークスに引き上げるかということが大きな話題になったが、ドゥカティはマルケスを選んだ。23年シーズンのデータをことごとく凌駕するマルケスに驚愕したからだ。

最強王者を育んだ「教え」

 マルケスは子どものころから、両親やコーチ役だった元世界チャンピオンのエミリオ・アルサモラに「とにかくチェッカーを受けること」を叩き込まれてきた。それがチームへの恩返しであり、最強最速チームでもそれを実践している。

 今季はアメリカGPとスペインGPで転倒しているが、どちらも再スタートを切っている。アメリカGPは足を乗せる右側のステップがなくなって仕方なくリタイアしたが、スペインGPは最後尾からボロボロのマシンで追い上げて12位になった。今季マルケスが優勝できなかったのはこの2レースと、フランスGPの2位、イギリスGPの3位だけ。その他は圧倒的な強さで勝利した。

【次ページ】 マルケスが求めるピンポイントの性能

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