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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「もう、野球せんでええんだ」名古屋大学野球部“史上初のプロ選手”が受けた戦力外通告…地元愛知のテレビ局で報道記者になった「異色の経歴」秘話
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byL)Sankei Shimbun、R)NumberWeb
posted2025/08/04 11:07
2020年に中日の育成1位でドラフト指名を受けた松田亘哲さん。現在はCBCテレビの報道局記者
「もう、野球せんでええんだ」戦力外→就活でテレビ局へ
イップスから抜け出し夏場以降は実戦にも復帰したが、願った“5年目”のチャンスはなかった。2023年10月5日、戦力外通告。
「予想はしていました。もちろん、来年があるならこうしたいという希望は持っていましたが、一方でここまでだろうな、という思いもありました。最初は辛かったですけどね。でも2日ぐらいしたら“ああ、オレもう野球せんでええんだ”という思いになって(笑)。野球はここでスパッと終わらせた方が気持ちいいなという考えに切り替えられました」
球団からは職員として残るオファーも受けていたが、一般企業への就職の道を選んだ。1カ月後には、中途採用の募集があった地元テレビ局のCBCテレビに応募し、とんとん拍子に合格した。
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「周りの選手たちも『いいんじゃない』という反応でした。同期入団の郡司(裕也、日本ハム)からは現役の時から『お前はサラリーマンに向いている』って言われていましたしね(笑)」
「報道記者をやるなんて考えもしなかった」
2024年4月に入社し、7月から報道部に配属された。最初は遊軍として街ネタや地域の話題を担当した。忘れられないのは、2月に愛知県稲沢市で行われる「国府宮はだか祭」の取材だという。
「稲沢エリアの男性がふんどし姿の“はだか男”としてもみくちゃになる祭りなんですが、CBCは例年、2週間前くらいから当日まで追いかけているんです。毎年、若手の遊軍が『はだか祭キャップ』として密着するんですが、それに選ばれまして(笑)。もう毎日、はだか祭りの取材ばかりしていましたよ」
2月といえばキャンプでブルペンに入っていた左腕が、1年後には「はだか祭キャップ」に。さらに今年から愛知県警担当を任され、事件事故などよりシビアな現場を取材している。5月に航空自衛隊の練習機が愛知県犬山市の池に墜落した事故が起きた際には、現場に急行して中継のリポートも担当した。
「報道記者をやるなんて考えもしなかった。現役時代は、あえて情報を入れないようにニュースもほとんど見たことがなかったんです。だから入社してからは必死に色々なことを勉強して一生懸命頑張るという毎日。県警担当と聞いた時も最初は嫌だなと思いましたが、やってみれば気づけることは沢山あるし、想像できなかったような経験をさせてもらっている。それに(取材相手の)警察って野球好き、ドラゴンズ好きの方も多いので、僕結構ウケはいいんですよ(笑)」

