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「目、デカッ…と言われるたびに傷ついた」18歳で突然バセドウ病に…元女子バレー日本代表・鍋谷友理枝の告白「毎日薬を飲み続けてました」
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byL)Yohei Osada/AFLO SPORT R)Shigeki Yamamoto
posted2025/07/10 11:04
18歳の時にバセドウ病を患った元バレーボール女子日本代表・鍋谷友理枝。周囲のサポートのおかげで、13年間もの現役生活を走り抜くことができた
同じバセドウ病に罹患していた競泳の元日本代表・星奈津美だった。2012年のロンドン五輪200mバタフライで銅メダルを獲得した後、2014年に甲状腺摘出の手術を敢行し、2年後のリオデジャネイロ五輪で再び銅メダルを獲得した。
「わからないことや、つらいことを相談できただけでなく、星さんを見ていて、私もこんなふうに頑張りたい、って。いつか自分も同じように乗り越えられたら誰かの役に立てるのかもしれない、と初めて思えるようになりました」
バセドウ病の完治のためには、星と同様に手術をすることが最善策。実際に医師からも勧められたが、首の皮膚を切開するため、術後約1カ月は上を向くことができない。バタフライを専門とする星は、その後はシュノーケルをつけながら練習したと聞いたが、空中に舞うボールを扱わなければならないバレーボールで上を向けないのは致命的だった。
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「私はいつもギリギリの当落線上にいる選手だから、手術するとなれば『じゃあ鍋谷はいらない』と言われるんじゃないかと思うと怖かった。バセドウ病は治るかもしれないけれど、1カ月も抜けたら私は終わり。『手術の選択肢はないから、何とか薬でお願いします』と伝えて、去年までずっと、現役生活の間は毎日薬を飲み続けていました」
体重10キロ減「バレーどころじゃなかった」
手術をせず投薬治療を継続したことで、状態を測る数値に波があった。2013年10月にはU23女子選手権に日本代表として出場して銅メダルを獲得しているが、翌年14年には体重が10キロ落ちることもあった。筋力もつかず、眼球突出もなかなか治らない。「正直、バレーどころじゃなかった」と振り返る日々は壮絶なものだった。
手術をしない選択が正しかったのか、今もわからない。それでも、病気が判明した当時と変わったのは、“受け入れる”覚悟ができたことだった。


