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「お前の方が使えんわ!」電撃トレード→監督室に怒鳴り込み→伊原春樹と衝突でオリ戦力外「問題児だな」なぜ山崎武司は楽天に拾ってもらえたか 

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間淳

間淳Jun Aida

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posted2025/07/07 11:02

「お前の方が使えんわ!」電撃トレード→監督室に怒鳴り込み→伊原春樹と衝突でオリ戦力外「問題児だな」なぜ山崎武司は楽天に拾ってもらえたか<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2003年、オリックス移籍直後の山崎武司。しかし所属2年目は監督との関係に悩まされることが多かった

「お前の方が使えんわ!」

 まだシーズン中の9月に実家のある名古屋へ戻った。

「オリックスで良い思い出はないですね。唯一良かったのは、谷佳知とヤワラちゃん(谷亮子さん)の結婚式に出席したことくらい。今思えば、オリックスに悪いことをしたと反省しています」

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 良い思い出はないかもしれない。ただ、その後の財産となる出会いはあった。オリックスを退団した山崎は、もう二度とユニフォームを着るつもりがなかった。そんなある日、聞いたことのない声で電話がかかってきた。電話の相手は野茂英雄の代理人としても知られる団野村だった。

「山崎さん、もう野球はやらないんですか?」

 団の名前は知っていたとは言え、会ったこともない人からの言葉に山崎は「あなたに今後を心配される筋合いはない」と感じた。警戒心が解けたのは、団の口から、ある人物の名前が出てきたからだった。

「レオンから、山崎さんの力になるように頼まれています。レオンから『日本で仲の良かった選手に山崎という人間がいる。彼が困った時は助けてあげてほしい』と言われています。山崎さん、楽天イーグルスで野球をやりませんか? 私が交渉役を務めますから」

「お前は問題児みたいだな」

 山崎がオリックス時代に信頼していたレオン・リーは、団とも親交が深かった。そして、団は新球団として誕生したばかりの楽天への入団を山崎に勧めた。現役引退を決めていた山崎は当時、楽天に全く興味を持っていなかったという。ただ、入団への物語は始まっていた。

 2004年に中日が日本シリーズに進出し、山崎はラジオのゲスト解説に招かれた。球場には、楽天の監督に決まっていた田尾安志が来ていた。長年お世話になっていたラジオ局のスタッフに促されて、山崎は田尾に渋々挨拶した。

「媚びるみたいで嫌だったのに、無理やり挨拶に行かされました。田尾さんから『お前は問題児みたいだな。色んなところから聞いているぞ』と言われ、間違っている情報は否定して説明しました。すると、田尾さんは『聞いている話と違った。誤解して悪かった』と謝ってきました」

 その場で楽天に誘われることはなかったが、田尾は「このまま引退させてはいけない選手」と山崎に可能性を感じた。後日、「武司、野球やるぞ!」と何度も連絡がきた。最初は断っていた山崎は田尾の熱意に押されるように、「あと1年だけやろう」と楽天入団を決断。田尾は1年で監督を退いたものの、山崎の活躍は知られている通りだ。

野球に長く携わるには、人付き合いも大事

 山崎の野球人生には、ターニングポイントで必ずキーマンが現れる。

【次ページ】 中日残留もトレードも失敗だったかもしれないが

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