「野茂英雄はサイドスローなんです」メジャーに最も近かった男・佐々木誠が語る“新たな野茂観”と“特異性”「球種を見破っても打てなかった」 

　右投手は、基本的にはプレートの三塁側寄りに軸足となる右足を据える。そうすれば、左打者のインコースには、ホームベースを斜めにクロスして突くことができるため、相手を詰まらせやすい。打者の方も、その対角線上に食い込んでくるボールが気になるので、真ん中から外角を狙っていたとしても、どこか踏み込みづらくなる。

　右バッターに対しても、三塁側寄りから投げれば、それこそ打者の背中側から、右腕が振られてくるように映る。そうした“幻影”も活用しながら投球を組み立て、打者を打ち取っていくというのが、スタンダードな戦略とも言えるだろう。

野茂はサイドスローだった!?

　ところが、野茂は一塁側に立った。オーソドックスな右投手とは、まさしく逆の位置になる。そこに、どんな狙いがあったのだろうか。

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　佐々木の描写は、新たなる“野茂観”とも言える視線のように思えた。

「野茂って、手は真横なんです。投げるとき、体が一塁側へ倒れてるじゃないですか。だから、上に上げてるんじゃないんです。例えば、山沖（之彦・元阪急、191センチの長身右腕）さんなんかは、真上に上げるんですよ。でも野茂の場合は、左肩を一塁側の方へ倒していくんです。オーバースローじゃない、サイドスローなんです。それが、左肩を倒していくことで、右腕の角度が上がってオーバースローになるんですよ」

　つまり、体で腕の位置を調整している？

「そう。だから、角度が左ピッチャーなんです。分かります？　右ピッチャーなのに、左ピッチャーの角度で来て、左ピッチャーの球の軌道で来る。だから、バッターとしては感覚が狂うんです。なんで右なのに、左の軌道で来るのかが不思議だったんです」

言われてみれば、野茂の左肩は一塁側に大きく倒れているため、実は右腕の角度は「サイドスロー」に近くなっている！　©Koji Asakura

体を倒すことで腕の角度が上がる

　佐々木の説明を受けながら、私は自分の右腕を、地面に平行になるように上げてみた。つまり、サイドスローの腕の位置になる。それを、オーバースローの位置に腕が来るようにするために、左肩を地面に向かって倒していく。すると、右腕が上がってくる。

「そういうことです。分かります？」

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