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「俺は捨てられるのに、何わろてんねん!」横浜→広島トレード通告に木村昇吾は心で叫んだ…それでも「一生懸命な姿を見ていてくれたんだ、と」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/25 11:06
横浜では一軍に定着できなかった木村だが、広島へのトレードで運命が変わりはじめた
万永コーチ、河野との守備練習で守備力は上がり、盗塁もチャレンジすればすべて成功させて、ついに一軍からお呼びが掛かる。「昇吾がいなくなったら練習できなくなるじゃん」と残念がる河野もどこか喜んでくれていた。
ついに一軍で貢献、しかし……
9月19日、ホームでの広島戦。9回裏、木村は代走で起用される。クローザーの永川勝浩から盗塁を決め、相川亮二のサヨナラ打を呼び込んだ。あのときこみ上げてきた熱い感情は今も忘れられない。プロ5年目、初めて勝利に貢献できたことでようやくベイスターズの一員になれた気がした。ひと皮むけた感覚を得られた。
クビはつながった。
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しかしホッとしたのもつかの間。シーズン後、ベイスターズの納会から横浜に戻ってきた途端に球団から電話が掛かってくる。「明日、球団事務所に来てくれ」とだけ言われた。契約更改は別日に設定されていただけに“トレードだな”と直感が働いた。
事務所には「偉い人」が二人座っていた。カープ行きが告げられた。
何で笑っているんだ!
「『うちでは活躍できなかったけど、向こうで頑張ってくれ』みたいな感じで言われたんですけど、笑っているように見えたんですよね。“俺、捨てられるんやぞ、何わろとんねん!”って心のなかで叫びましたよ」
カープからは小山田保裕が来ることになり、岸本秀樹との1対2トレード。やっとベイスターズの一軍で活躍できるイメージを持ち始めていただけに、ショックは大きかった。そのまま球団職員の前に立ち、こう挨拶した。

