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タイトルまで恋愛厳禁→女流四冠→将棋連盟初の女性会長に「私が選ばれたことが挑戦」「19歳から茶道も」清水市代の人生が凛々しい
posted2025/06/26 06:00
日本将棋連盟初となる女性会長となった清水市代(2015年撮影)。女流棋士として比類なき実績を残した1人でもある
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa
今期で日本将棋連盟会長の退任を表明していた羽生善治九段(54)の後任として、唯一の女性常務理事である清水市代女流七段(56)が新会長に選出された。女流棋士の会長就任は初めてのこと。6月6日に東京都新宿区「日本青年館ホテル」で開かれた通常総会の模様や清水女流七段の棋士人生と横顔などについて、貴重な写真とともに田丸昇九段が紹介する。【棋士の肩書はいずれも当時】
「フリークラス制度要綱」改定が賛成多数で可決
将棋連盟総会は13時に始まり、羽生会長の挨拶と正副議長の指名(野月浩貴八段、宮本広志六段)、新会員の紹介、常務理事たちの各部報告と質疑応答などが行われた。藤井聡太七冠(22)は昨年の総会に続いて今年も出席し、中央2列目の席で伊藤匠叡王(22)と隣同士になった。
そして、4月28日の予備選挙で選任された8人の常勤理事、外部理事、非常勤理事、監事が拍手で承認された。今年は3件の決議事項があり、それぞれ投票で決まった。
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そのひとつが「フリークラス棋士制度要綱改定」の議案である。
女流最高タイトルの白玲を通算5期獲得した場合、フリークラス編入の形で棋士として四段昇段を認めるもの。白玲戦を主催するヒューリック(不動産会社)が優勝賞金を1500万円から4000万円(ほかに特別賞が1000万円)に増額したことにともない、新たに制度設計された。
私こと田丸は賛成する考えだったが――女流棋戦だけの実績で棋士に認めていいのかなど、いろいろな見方があり、総会でも賛否両論の意見が出た。白玲3期の実績を挙げている西山朋佳白玲(29)は、名ライバルの福間香奈女流六冠(33)の隣に座り、棋士たちの声に聞き入っていた。
そして投票が行われ、賛成多数で承認可決された。票数の公表はなかった。
本命不在…森下か糸谷か清水か
昨年の総会は16時頃に閉会となったが、今年は議案や答申が多くて時間がかかった。常勤理事たちの互選で新会長を決める別室での協議に入ったのは18時過ぎだった。
過去10年の連盟会長は、近い順に羽生九段、佐藤康光九段(55)、谷川浩司十七世名人(63)。いずれも時々の最有力候補で、数分で会長が決まった。しかし今年は「本命」がいなかった。私は、理事年数が多い森下卓九段(58)、羽生会長が推したという清水女流七段、新任理事ながら若い頃から連盟運営に関心があった糸谷哲郎八段(36)の3人が有力と思っていた。
棋士たちは、理事らが総会の会場に戻ってくるのを待っていたが、なかなか現われなかった。

