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長嶋茂雄23歳と天覧試合…真実はサヨナラ弾だけでない「両チームに恩賜のタバコ」「初のONアベックアーチ」王貞治19歳は“打率.169の二本足打法”

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広尾晃Kou Hiroo

photograph byKyodo News

posted2025/06/25 06:00

初の天覧試合でサヨナラ本塁打を放ち、試合後インタビューを受ける長嶋茂雄

　1923年、正力松太郎は警視庁刑務部長だったが、この年12月27日、摂政宮裕仁親王（のちの昭和天皇）の暗殺を狙った「虎ノ門事件」が起こる。警備の責任者だった正力松太郎は懲戒免官となった。

　その後、讀賣新聞社を買収した正力は、讀賣新聞を有数の大新聞にするとともに、職業野球（プロ野球）を創設し、戦後、人気スポーツへと成長させた。天覧試合で、正力は昭和天皇と35年ぶりに再会した。万感の思いがあった正力は、緊張のあまり貴賓室に続く階段を踏み外して転倒したという。

　大相撲では「天覧相撲」は明治以来何度も行われていた。大学野球の早慶戦や都市対抗野球でも「天覧試合」が行われた。しかしプロ野球の「天覧試合」は史上初めての出来事だった。

　試合中継を行ったのは、日本テレビとNHKだった。この春の「ご成婚パレード」に合わせてテレビ受像機を購入した多くの日本人は、慶事があったばかりの天皇、皇后両陛下がご覧になる試合はどんな展開になるのか、と注目した。

　ちなみにこの日の日本テレビの実況中継を行ったアナウンサーは、今年4月に96歳で死去した越智正典。このほどの長嶋茂雄の逝去に際して、コメントを貰おうと越智宅に連絡したメディアによって、越智が死去していたことが明らかになった。

　6月25日、後楽園球場での試合のプレーボールは午後7時、昭和天皇、皇后両陛下は10分前の6時50分に来場された。貴賓席へと着席された両陛下を、両チームの選手や監督、コーチは球場に整列して迎えた。

　試合後、両軍選手、監督、コーチには陛下から「恩賜の煙草」が下賜された。戦前を知る当時の選手たちは「とても吸う気になれず、大事にしまった」と語った。

　巨人の監督は水原円裕（茂）。「試合前の選手の練習はほとんど見ない」ことで知られていた。試合開始の1時間前くらいに、スーツ姿で球場にやってきて、スーツを皺ひとつなくハンガーにかけて、入念に着替えをして30分前にグラウンドに姿を現す。しかしこの日はさすがに、いつもより1時間早くやってきていた。

　阪神の監督は田中義雄。カイザー田中と言われた日系二世。戦前、強打の捕手として活躍したが「アメリカのために戦った日系人が、天皇陛下の前で試合をする」ことに感激していたという。

　当日の両軍のオーダーを、年齢とともに記しておく。

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