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長嶋茂雄23歳と天覧試合…真実はサヨナラ弾だけでない「両チームに恩賜のタバコ」「初のONアベックアーチ」王貞治19歳は“打率.169の二本足打法” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/06/25 06:00

長嶋茂雄23歳と天覧試合…真実はサヨナラ弾だけでない「両チームに恩賜のタバコ」「初のONアベックアーチ」王貞治19歳は“打率.169の二本足打法”<Number Web> photograph by Kyodo News

初の天覧試合でサヨナラ本塁打を放ち、試合後インタビューを受ける長嶋茂雄

〈大阪タイガース〉
監督:田中義雄 49歳
1(遊)吉田義男 25歳
2(二)鎌田実 20歳
3(三)三宅秀史 25歳
4(一)藤本勝巳 21歳
5(左)大津淳 27歳
6(右)横山光次 26歳
7(中)並木輝男 20歳
8(捕)山本哲也 24歳
9(投)小山正明 24歳

〈讀賣ジャイアンツ〉
監督:水原円裕 50歳
1(左)与那嶺要 34歳
2(遊)広岡達朗 27歳
3(中)藤尾茂 24歳
4(三)長嶋茂雄 23歳
5(右)坂崎一彦 21歳
6(一)王貞治 19歳
7(二)土屋正孝 23歳
8(捕)森昌彦 22歳
9(投) 藤田元司 27歳

 大阪はみんな20代で、巨人も1番の与那嶺を除き、20代以下。長嶋が入団した前年の1958年に川上哲治、藤村富美男、小鶴誠、西沢道夫ら戦前からの大選手が引退し、プロ野球は世代交代期にあった。

“じつは絶不調”だった長嶋が2本塁打

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 劇的な結末は誰もが知るところだが――天覧試合前からの成績を紐解くと、じつは知られていない真実もある。

 まず、長嶋茂雄は2試合連続無安打と絶不調だった。前年、無双の活躍をした長嶋を各球団の投手は警戒し、真正面から勝負しなくなった。四球攻めにうんざりしているうちに、打撃のタイミングが狂ってしまったのだ。

 しかしこの日の試合前の打撃練習では、腰が入った鋭い打球音が響いていた、本人は「(天覧試合は)意識しなかった」と言っていたが、長嶋はこの試合で突如復活した。

 当時からプロ野球の応援団は鉦や太鼓の賑やかな応援を繰り広げていたが、この日は鳴り物禁止。いつもより静かなグラウンドで、試合が始まった。

 3回表に大阪の先発・小山がタイムリーヒットを打って試合が動いた。しかしこの日の小山は、球が高めに上ずっており、そこを巨人打線がついたのは5回裏。4番長嶋、5番坂崎が連続本塁打を放ち、2-1と巨人が大阪を逆転する。

 ところが巨人の先発・藤田も今一つで、6回には三宅のタイムリーと藤本のホームランで大阪が逆転し、4-2と2点リードを奪った。

初のONアベック砲…そして長嶋のサヨナラ弾

 しかし巨人も食らいつき、7回裏に王貞治が2ランホームランを放つ。

 両軍最年少、19歳の王の打率は試合前時点で.169。春の甲子園優勝投手として鳴り物入りで入団したものの、すぐに打者に転向し、当時は三振が多い粗い打者だった。それでも水原監督は、王の将来性を買って6番で起用し続けていた。

【次ページ】 初のONアベック砲…そして長嶋のサヨナラ弾

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