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ツバメのさえずり日誌BACK NUMBER
ヤクルト・ライアン小川泰弘に“敵の名捕手”が「もっと粘れよ」…ルーキー時代の原点「体は小さくても、心はどこまでも強くできる」
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/08/27 17:01
35歳となった今季も奮闘する小川が新人時代を語ってくれた
原点を取り戻して復活
バテてはいてもトレーニングやランニングの量はあえて落とさずに鍛錬を重ねた。一方で、栄養面では赤身の肉を摂ったり、寮の自室にフットバスを持ち込むなど疲労回復に良いと聞けば何でも取り入れた。相手チームの“仕掛け”に気を取られるあまり、テンポを乱されていた投球を見直し、原点である“攻める”意識を取り戻した。
「トレーニングの部分からクイックに繋がるような動作や体の捌き方を見つめ直していったのですが、ある日の練習中に突然『あ、これだ』というものを掴んだんです。大したことじゃないんですけど、メカニック的なところでバチっとハマったような感覚があった。そこからピッチングを立て直すことができました」
トンネルを抜けた6月22日の広島戦で12球団のルーキー一番乗りで初完封すると、29日の巨人戦でハーラートップの8勝目。オールスター前に10勝に到達し、夏場に7連勝と白星を重ね続けた。新人王争いは菅野と、最多勝争いは広島・前田健太(当時)との、激しいデッドヒートになった。
体が小さい分、心の強さでカバーする
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当時の小川は、ルーキーながら強気の姿勢を貫いていた。まだ何者でもなかったキャンプ中から「目標は新人王」と言い切り、新人王やタイトル争いに関しても「絶対に負けたくない。投げる試合は全部勝つつもり」と口にしていた。
「強気で勝っていく姿勢を出したいと思っていました。そういう思いは野手にも伝わるし、弱気だと力は出ない。自分は体が小さい分、反骨心というか、心の強さでカバーしていきたいという気持ちはありました。心はどこまでも強くできる。若かったからこそで、さすがに今はまた少し違いますけどね」
9月22日、阪神戦で15勝目を挙げてリーグトップの前田に並ぶ。日程的に残りの登板は2試合だ。同28日には、13勝の菅野が黒星を喫して最多勝争いから脱落し、この時点で新人王はほぼ“当確”。翌29日、小川はDeNA戦で6回5安打2失点に抑えてハーラートップの16勝目を挙げて、最多勝のタイトル獲得を確実にした。

