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ツバメのさえずり日誌BACK NUMBER
ヤクルト・ライアン小川泰弘に“敵の名捕手”が「もっと粘れよ」…ルーキー時代の原点「体は小さくても、心はどこまでも強くできる」
posted2025/08/27 17:01
35歳となった今季も奮闘する小川が新人時代を語ってくれた
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Shigeki Yamamoto
プロ1年目で新人王と最多勝を受賞した投手には権藤博(中日)、野茂英雄(近鉄)ら錚々たる顔ぶれが並ぶ。2013年、そこに名を連ねたのが小川泰弘。1999年の松坂大輔(西武)、上原浩治(巨人)以来という快挙だった。
2013年入団のルーキーは、スター選手が揃っていた。パ・リーグでは日本ハム・大谷翔平、セ・リーグでは阪神・藤浪晋太郎と巨人・菅野智之(いずれも所属は当時)。プロの第一歩から注目を浴びていたそれら“大本命”の投手たちと比べて、小川はまさに“大穴”の存在だった。
当初は中継ぎ候補の一角だったが、猛アピールを続けて先発枠を勝ち取り、初登板から貪欲に白星を重ねていった。スターダムへ駆け上がったこのシーズンの中で、本人が振り返るターニングポイントは「5月」だという。
勝てなくなった小川に、ある大物選手が…
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「パタッと勝てなくなったんですよ。キャンプからずっと全力でやってきて、疲れが出てきたのだと思います」
トレードマークである「ライアン投法」は左脚を豪快に上げる分、下半身に大きな負担がかかる。対戦が一巡する中で相手チームに研究され、大きなモーションの隙をついて足で揺さぶられる場面が続いた。クイックモーションの修正に試行錯誤する中で、今度は球の精度が落ちてくるなど、負のループにハマりかけた。もがくルーキーに、ある大物選手が声をかけた。この時42歳、中日のベテラン捕手、谷繁元信だった。
「練習の合間だったと思うんですけど、『何してるんだよ。もっと粘れ。頑張れよ』って言ってくださった記憶があります。相手のキャッチャーだから、僕に疲れが出ているのは分かっているじゃないですか。その大先輩に声をかけていただいたのはビックリしたし、嬉しかったですね」


