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ツバメのさえずり日誌BACK NUMBER
ヤクルト・ライアン小川泰弘に“敵の名捕手”が「もっと粘れよ」…ルーキー時代の原点「体は小さくても、心はどこまでも強くできる」
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/08/27 17:01
35歳となった今季も奮闘する小川が新人時代を語ってくれた
マエケンが「最多勝獲れよ」
「必死でしたね。忘れられないのは(29日の)登板前日がちょうど広島戦で、試合前練習にマエケンさん(前田)から声をかけられたんです。『頑張れ。最多勝獲れよ』って激励してもらった。自分とタイトルを争っている相手に、そんなことが言えるなんて何て心が大きいんだろう、って。やっぱり超一流のピッチャーは凄いと思いました」
この年、小川の最終成績は登板26試合で16勝4敗、防御率2.93。前田を抑えて単独の最多勝と最高勝率(.800)、そして新人王の3つの栄誉を手にした。新人王の投票で、小川の得票は252票、次点の菅野は13票、3位の藤浪は8票。ちなみにパ・リーグの新人王は楽天・則本昂大で223票、次点の日本ハム・大谷翔平はオリックス・佐藤達也と並ぶ4票だった。
「あの時の自分ですか? 怖いものなしでしたね。いけいけドンドンで結果が出て、出来過ぎだとは思うけれど、よく突っ走ったなと思います。怪我をせず、でも体を限界まで追い込みながら。サポートしてくれた方がいたから出来たことだと思います」
帰省した途端、体が全く動かなくなった
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フルで駆け抜けたルーキーイヤー。オフシーズンの表彰ラッシュが落ち着き、愛知県田原市の実家に戻った小川はとてつもない虚脱感に襲われた。
「実家に帰ってホッとした途端、体が全く動かなくなったんです。ああやっと終わったー! え? 動かない! って……。今思うとあれは多分、燃え尽き症候群ですね。気を張って、戦いまくって完全に消耗していた。1年間ローテーションを回るってこれだけ大変なんだと実感しました」
錚々たる顔ぶれのルーキーを横目に、“大穴”から一気にスターダムに駆け上がった12年前。代名詞の「ライアン投法」に毎年のように手を加えながら、小川は今もヤクルト先発陣の大黒柱として投げ続けている。
「大好きな野球をやらせてもらえることにまず、感謝しています。やるからには悔いのないように成長し続けたいし、子供たちに夢を持ってもらえるような選手でありたい。そのためにこれからも新しいことに挑戦したり、突き詰めることを楽しんでいきたいと思っています」
小さな体に宿る強い心を武器に、進化を追い求める。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉


