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「受験勉強がないのが大きいんです」“慶応義塾高→慶大”が気づけばプロ野球一大勢力に…“打率.349”パ首位打者の柳町達だけではない
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/17 11:01
3割5分台も見える高打率でパ・リーグの首位打者に立つ柳町達。慶応義塾高校→慶大出身者が近年のプロ野球で一大勢力になっている
柳町は東京六大学で史上33人目、令和では初の「100安打」を達成した。通算113安打は14位タイ。ドラフト5位でソフトバンクに入団し、1年目から一軍公式戦に出場。シュアな打撃と守備範囲の広い外野守備で、出場試合数を増やしていた。
塾高OBと話しているとよく出てきたのが「柳町の打球は上がらないなー」との話だ。
2023年までの4シーズンで柳町の本塁打はわずか1本。打球は速いが角度が低く、スタンドインが極端に少なかった。しかし昨年は4本塁打、今季は早くも3本。柳田悠岐や近藤健介が故障離脱する中で、3番に座り打率.349で首位打者になっている。
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意外なことに、塾高出身で規定打席に到達した選手はいない。打撃タイトルももちろん初めてとなる。OBたちの期待は高まっている。
森林監督が語った”教え子の素顔”
柳町らが高校3年のときに、監督が上田誠氏から現在の森林貴彦監督に代わっている。まずは木澤は高校時代に右ひじを痛めたが、大学で活躍。20年ドラフト1位でヤクルトに入団。入団2年目から3年連続で50試合に出場、中継ぎ陣の中心的な存在となった。そんな木澤について、森林監督はこう評していた。
「木澤は考える力がすごかった。考えすぎなぐらいで、何か自分で探究しながらずっと練習しているような選手でした」
1学年下の正木は、高校時代からスラッガーとして鳴らし、21年2位でソフトバンクへ。学生時代から長打力は際立っていて、先輩の柳町と中軸を組むこともあった。むしろ柳町よりレギュラーの座が近いか、と思われたが4月に左肩を損傷し、左肩関節修復手術を受ける。今季は全休の見込みだが、来季の復活が期待される。森林監督もこう語っていたことがある。
「正木は1人でコツコツ努力するタイプです。うちには学生コーチがいるんですが、学生コーチと夜も残ってティーバッティングをやっていました。自分の打ち方をとことん追求するタイプで、私でも軽々しく声がかけられない感じでした」
廣瀨は高校時代、春夏の甲子園に出場。大学時代は主将を務め、史上4位の20本塁打タイを記録。23年3位でソフトバンクに入団。先輩の柳町、正木とスタメンに名前を連ねることもあった。彼も打撃が売りで、今後の活躍が期待される。
推薦制度ができたここ20年で甲子園常連に
現役以外の塾高出身プロ野球選手は、赤木健一(国鉄・外野手)、渡辺泰輔(南海・投手)、佐藤友亮(西武・内外野手)、白村明弘(日本ハム・投手)の4人だけだ。
なぜ、近年、塾高出身選手が活躍するようになったのか?
要因の一つは2003年、上田前監督時代の同校にできた「推薦制度」にあると言える。


