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「野茂英雄は練習嫌い」だったのか? 野茂が口にせず鈴木啓示が誤解していた“真実”が明らかに「ボタンの掛け違いで…やり切れないよね」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byMakoto Kemmisaki
posted2025/06/13 11:09
鈴木啓示監督は「野茂は練習をしない」と信じ込んでいたが……選手は知っていた“真相”を光山英和が明かしてくれた
野茂は一人で徹底的な練習を済ませていた
光山は、野茂が全体練習前に、一人で徹底した強化トレーニングをしていることを知っていた。時には、その独自練習に付き合うこともあった。
「野茂は、グラウンドに来る前に全部練習が終わっているんです。ウエートトレーニングだけじゃなくて、ランニングもやります。だから、試合前の全体練習が始まったら、外野で球拾いをやってるんですよ、キャッキャッ言いながらね。
その姿が、多分、鈴木啓示さんは気に入らなかった。僕らは一緒にトレーニングも行ったし、その後、ランニングしているのも聞いていたんです。野茂は、全体練習が始まるときには、もうやることがなかったんです」
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それを、いちいち報告したり、公表したりしない。
「練習嫌い」という誤解
だから、野茂は練習嫌い、普段は何もしない。投げない、走らない。周囲から、そして鈴木から、そう見られてしまっていたのだ。
「あいつ、わざわざ『トレーニング、行ってきました』とか誰にも言わんし、『走ってきました』とも言わんのです。でも、食事のコントロールだってやってたし、何もかも、登板に向けてやっていたんです。
その姿勢を、選手全員が見て、知っていて、あんなわがままなヤツやけど、その野球に対する姿勢はホントにすごくて、石井(浩郎)さんとか、セカンドの大島(公一・現法大監督)とか『だから、あと一歩が動く』って、いつも言ってたんです。野茂の練習する姿を見ているから、何とか捕ろう、何とか止めようと思うって、それ、よく話していました。僕も、野茂の登板の前日とかは、石井さんと『明日、野茂やから外出やめよう』とかってなりましたからね」


