「野茂英雄は練習嫌い」だったのか？ 野茂が口にせず鈴木啓示が誤解していた“真実”が明らかに「ボタンの掛け違いで…やり切れないよね」 

開幕戦交代事件ではなかった“決定打”

「鈴木啓示さんも、ちゃんと呼んで、話して、という人でもなかったですからね」

　捕手の光山英和（現ロッテ1・2軍統括コーチ兼統括コーディネーター）が明かした野茂の練習ぶりを聞くと、鈴木との間に誤解と不信感が生じるその下地が、はっきりと見えた。

　1994年の開幕戦で、8回までノーヒットノーラン。3点リードの9回1死満塁で交代させられたことを、野茂が「ずっと怒っていた」という貴重な秘話を教えてくれたのも、その日のマスクをかぶっていた光山だった。

この1994年の開幕戦での秘話を教えてくれた光山（手前）は、野茂と鈴木のさらなる確執の理由を語った　©Koji Asakura

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　それが、鈴木と野茂が決裂する“決定打”だったのだろうか。

「そう……いや、開幕戦は決定打じゃないかもしれんね」

　肯定しかけて、思い出したように、即座に否定した。

　光山が「雑誌の取材とかで、何度も喋ってるんやけどね」と明かしてくれたもう一つの秘話は、私にとって実は初耳だった。だから、余計に衝撃的だった。番記者として、そこまで目を配っていなかったことにも、少々、情けない思いと深い反省があった。

全く違っていた野茂と鈴木のトレーニング法

「やっぱり、トレーニング方法が元々違っていたんですよね」

　走れ、投げろ。ウエートトレじゃなく、投げる筋肉は投げてつけるんや。ランニングは車で言ったら、ガソリンを入れるのと同じや。だから走れ。

　自らの経験則をもとに、ひたすら、投げ込み、走り込みを身上とする鈴木には、中6日の先発ローテーションでも、ブルペンに入るのは1度か2度、それも30球程度という野茂の調整法が、歯がゆくてしょうがなかった。

野茂の調整法は鈴木の経験とまったく異なっていた　©Makoto Kemmisaki

　その一方で、野茂は中6日の調整期間に遠投をして、ウエートトレーニングをする。登板後の疲労回復も、鈴木は外野フェンスに沿ってひたすらジョギングをしたが、野茂はウエートルームのエアロバイクを、音楽を聴きながら漕いでいる。

　そのスタイルも、やり方も、それこそ右と左、東と西、180度違うのだ。

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