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「『オジさんが頑張っているんだから』と思ってほしい」…宇都宮ブレックス“Bリーグ最多”3度目の戴冠を生んだ「35歳の守備職人」の波乱万丈
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTOCHIGI BREX INC.
posted2025/06/14 17:01
3度目のBリーグ制覇を果たした宇都宮ブレックスで活躍する35歳の遠藤祐亮。なぜ「いぶし銀」のベテランはチームの信頼を集めるのか
「最初にしっかりトーンを作って」の指示
ボールを運ぶことすら大変だと思わせるレベルのプレッシャーを相手PGにかけ続けた。現在は35歳になる遠藤はこう振り返る。
「ジーコ(HC代行)以外はみんな、僕より年下なので、たぶん言いづらい部分もあったと思うんですけどね(笑)。『遠藤さんしかいないんで、最初にしっかりトーンを作ってください!』と言われました」
それだけのプレーをすれば体力を消耗する。その代償として、プレータイムが減るのは避けられない部分がある。あるいは、遠藤がハードな守備によって流れを作った後に、交代出場できる立場のほうが”美味しい“とも言える。
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だから、遠藤のなかには葛藤もあった。ただ——。
「これまで『トーンを作ってくれ』と言われたことはなかったんですよ。だから、一緒に試合に出ている残りの4人はもちろん、ベンチにいる選手たちに伝わるようにやっていました。『オジさんがあそこまで頑張っているんだから、オレたちも頑張ろう』と思ってもらえるように。
ただ、実際に、相手選手に前から当たっていくと、本当に手ごたえがあって。そして、周りもその流れに乗っかって、良いディフェンスをしてくれるという感覚がファイナルではすごくありました」
その成果が色濃く出たのは、1勝1敗で挑んだファイナルのGAME3だ。この試合では、前半終了時に12点ものリードを許してしまった。
ただ、苦しい状況でもブレックスの選手たちは、前半から同じような強度で、守備時にプレッシャーをかけ続けた。
実際、相手のパスミスを何度も誘発していた。それを受け、キングスはガード陣だけではなく、NBAでのプレー経験もあるエースのヴィック・ローがボールを運ぶようになった。オールラウンダーであるローから直接ボールを奪うようなシーンはほとんどなかったが、相手エースにそこまでさせたところに手ごたえがあった。
「これでローの体力は確実に削れるな」
遠藤は振り返る。
「ロー選手はセミファイナルでも、ものすごい活躍を見せていましたよね。レギュラーシーズンで戦った時とは別人のような感じを漂わせ、危険な雰囲気がありました」

