核心にシュートを!BACK NUMBER
「『オジさんが頑張っているんだから』と思ってほしい」…宇都宮ブレックス“Bリーグ最多”3度目の戴冠を生んだ「35歳の守備職人」の波乱万丈
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTOCHIGI BREX INC.
posted2025/06/14 17:01
3度目のBリーグ制覇を果たした宇都宮ブレックスで活躍する35歳の遠藤祐亮。なぜ「いぶし銀」のベテランはチームの信頼を集めるのか
後述するが、今回のCSでは遠藤のプレータイムは大きく減った。それは戦術面での影響もあるのだが、若手の活躍も無縁ではない。
「正直、もっと長く試合に出たいなという気持ちはあります。現実を認めたくはない部分はあるし、複雑な感情も……」
では、もしも、あの試合と同じような場面が来たらどうするのか。答えはハッキリしている。
ADVERTISEMENT
「同じことを伝えると思います」
そんな葛藤があったものの、遠藤が今回の優勝について心の底から喜べたのは、「ブレックスらしさ」を体現して、タイトルをつかんだからだ。
では、「ブレックスらしさ」とはどういうものなのか。
優勝のたびに変わった遠藤の「役割」
ブレックスはBリーグで最多3度の優勝を飾ったチームだが、遠藤の役割は毎回、少しずつ変わってきた。2017年の初優勝時の遠藤のタスクは、マークする相手にハードなプレッシャーをかけ続けること。当時の年齢はチーム内では下から数えたほうが早かったため、自分の役割に専念できた。
2022年の2度目の優勝時は、守備での貢献はそのままに、エースの比江島慎に次ぐ得点源としての役割も求められた。
そして、2025年の今回。まず、3Pを高確率で決めることを求められ、44%という成功率を残した。これは出場した7度のCSでの自己ベストタイの記録だ。ただ、もっと大きな仕事は別にあった。
「守備のトーンをセットする役割を担ってほしい」
大事なCSを前に、そう言われた。「トーンをセットする」というのは、「どれくらいの強度で、相手にプレッシャーをかけ続けるべきなのか」を見本として示す仕事である。
今回のCSにおけるブレックスの戦いのなかで特徴的だったのは、相手の司令塔であるポイントガード(PG)に対して、相手陣内にボールがあるときからプレッシャーをかけ続けたことだ。
例えば、セミファイナルで対戦した千葉ジェッツ。日本代表の富樫勇樹だけではなく、将来のNBA入りをも視界に入れるゴールデンルーキーの瀬川琉久というPGがいた。そして、ファイナルで顔を合わせた琉球ゴールデンキングスでは、最終的に新人賞に輝く脇真大がPGを務めていた。相手のPGから自由を奪うのは、今回のCSを通しての大きなミッションだった。
そして、遠藤はそれを実行し続けた。

