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「上半身の筋肉量が増えて…」女子400m“17年ぶり日本記録超え”はなぜ起きた? 21歳の新星フロレス・アリエ“覚醒のワケ”「また日本記録に挑戦したい」 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/06/06 11:01

「上半身の筋肉量が増えて…」女子400m“17年ぶり日本記録超え”はなぜ起きた? 21歳の新星フロレス・アリエ“覚醒のワケ”「また日本記録に挑戦したい」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

今季、400mでこれまでの自己ベストを1秒以上更新した日体大3年のフロレス・アリエ。その進化の秘密は「上半身強化」にあるそう

 静岡国際では最終コーナーを抜けるあたりでトップを走っていた松本に追いつき、残り60~70m付近で逆転。ゴールする瞬間まで力強い走りを見せ続けた。

「もちろん疲れるのは疲れるんですけど、足は乳酸が溜まりにくい体質みたいで踏ん張りが利くというか。それが活かせたと思いますし、自分の一番の強みといっていいのかもしれません」

「向かい風が一番走りやすい」

 静岡国際の翌週の関東インカレ女子400mでも強い向かい風に見舞われながらも最後の直線で周りの選手の追随を許さなかった。

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「個人的には向かい風が一番走りやすいですね。レースのラスト100m、ゴールに向かうきついところで体を動かすことがこの400mの魅力だなと思っていて。だから100mも200mも向かい風だったら楽しいのになってよく思うんですよ。でも、誰も共感してくれませんけど(笑)」

 一般的には追い風を好むスプリンターが多い。風の抵抗を大きく受ける短距離種目においてそれを最小限に留めたいと考えるのが普通だ。だが、彼女にとってはその状況さえも「魅力的」に映っている。

 一方で、大舞台でも臆することない走りで驚異的なタイムを記録しているものの、「走る前はちょっとメンタルが弱いんです」と意外な言葉も。

「静岡国際でもレース前は本当に走るのが嫌で……(苦笑)。招集所に行く直前に先生(日体大の大塚光雄女子スプリントコーチ)が『今どのくらい走れているのかという確認で走ってくればいいよ』『なるようになるよ』と声をかけてくれて、それで気持ちが楽になってレースに臨めたんです。

 いつも『1周走ってくればいいよ』とか『走り切ってくれば大丈夫』とプレッシャーをかけずに送り出してくれるんですが、そういう言葉があるからこそメンタル的にもいい状態でスタート地点に立つことができていますね」

【次ページ】 国籍が取れれば「また日本記録に挑戦したい」

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