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甲子園の風BACK NUMBER
「教えすぎると、子供たちが迷うんで…」打者は全員両打ち&ノーサイン野球で“大阪府大会ベスト16”進出…ナゾの府立高を育てた監督の正体は?
text by

清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2025/06/01 17:01
2022年の秋季大阪大会でベスト16まで勝ち進んだ府立佐野高校を率いた藤井朋樹さん。ノーサインや全打者両打ちというトリッキーな戦術の狙いは何なのか
原点に返ったナチュラルノーサインベースボールが年々、進化して2022年の秋、快進撃を見せる。2勝して府立の難敵汎愛にも勝ってベスト16に進んだ。5回戦は私学の強豪に敗れたが、21世紀枠の大阪府推薦校に選ばれた。センバツ出場はならなかったが、府立高のノーサイン野球の存在が近隣で知られるようになった。
いつでも「スイッチ」するわけではない
今シーズンに入って、ある日の練習試合を観戦した。藤井さんはベンチの最後列から直立腕組みをして戦況を見つめる。攻撃回で選手を集める。
「相手ピッチャーはストライク率が高いから最初からスイングしていこう、空振りでもいいから。お、振ってくるやんって意識するから。そこで何が起こるかやで」
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「ランナー2人でダブルスチールやって、動かれる恐怖を相手にさせなきゃいけんよ。アクションすることを、勇気をもってできるかやぞ。ランナーが助けてくれる、バッターが助けてくれることをアイコンタクトしてな」
言葉の指示は普段の練習内容をグラウンドでどれだけ出せるか、ということへの叱咤だ。
この日は打席をスイッチしない選手が多かった。
「今日は揺さぶっても効果がない、レベルの高いピッチャーでした。勝ちにつながらないなら、スイッチは選択しないという子供らの判断でしょう」
身長165センチのエースの右田は最速125キロほど。それでも緩急を使って強豪校と渡り合える術を持っている、と藤井さんは言う。
「春季大会の4回戦で大阪桐蔭と当たるんです。向こうはなんで金光大阪を抑えたんやろ(2024年の秋季大会で勝利)と思っている。そこの相手の心の隙に入って行って、さらに惑わせられれば(※春季大会は3回戦敗退で、大阪桐蔭との対戦は実現せず)」

