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甲子園の風BACK NUMBER
打者は全員スイッチヒッター、8年前からノーサイン野球…でも「21世紀枠の推薦校」に? 秋大会で大阪ベスト16進出「ナゾの公立高」の秘密を追う
posted2025/06/01 17:00

2022年の秋季大阪大会でベスト16まで勝ち進んだ府立佐野高校。当時から珍しい「全員両打ち」のチームスタイルだった
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清水岳志Takeshi Shimizu
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Takeshi Shimizu
高校野球の強豪校がひしめく激戦区・大阪。大阪桐蔭、履正社といった強豪私学が幅を利かせる一方で、健闘を見せる公立校もいくつもある。そのひとつ、大阪府立佐野高校は世にも珍しい「打者全員が両打ち」という驚きの戦法で、3年前の秋季府大会ベスト16という実績を残した。他にも監督がサインを出さない「ノーサイン野球」など変わったスタイルの同校。果たしてその秘密はどこにあるのだろうか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
「秋季大会の登録メンバー表をみたら、選手全員が左右両打になっていて、驚きました」
大阪のある高校監督がこう言って笑った。
メンバー全員両打ち…その狙いは?
漫画の世界の話ではない。大阪府立佐野高校の選手はみんなスイッチヒッターなのだ。2016年ごろから始めたと藤井朋樹元監督が振り返る。
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「ただ、うちの生徒はプロで活躍された松井稼頭央選手や西岡剛選手のようなスイッチヒッターではありません」
ヒットはもちろん、長打を打てるバッターは「1人だけ」だという。
「目的は相手ピッチャーをどう崩すか、ということ。ピッチャーの球筋を見て、より攻略することの工夫をする。打つということに重きを置いてない。ランナーと協力して成り立つスイッチヒッターです」
各々の努力としては右と左の打席で球筋は違って見えるが、イメージを一致させることだ。プラス捕手の位置からのイメージも加わったらなお、ボールとバットのコンタクトのチャンスは広がる。
「3つの映像のイメージを立体的に一致させてね、と。となると打席を入れ替えて3球ぐらい振ってみようかなとなるんです。最初は当たらないんですが、だんだん、打てるようになって、反対打席に入るのも苦にならない。ツーストライクまで粘るとか、ワンストライクで右左を変えるとか、考えだす」