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ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「おまえ、平田だろ!」プロレス史に残る“珍事件”のナゾ…スーパー・ストロング・マシンの正体を明かした藤波辰爾は本当に「ウッカリ」だったのか?
text by

堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2025/05/17 17:00
40年前の「おまえ、平田だろ!」事件とは何だったのか?(ドキュメント前編)
2日連続の「お前は平田だろ!」
そして「平田だろ」発言があった翌日の5・18後楽園ホール大会では、第5試合でトニー・セントクレアーと一騎打ちを行ったマシンに場内からは大「平田」コールが起こり、メインイベントのアントニオ猪木&藤波辰巳vsボブ・バックランド&アイアン・マイク・シャープの一戦では、リングサイドに腰を下ろし視察するマシンに対して藤波が再びマイクを握り、「おまえは平田だろ! ファンもみんなそう思ってるぞ。マスクを脱ぐんだ!」と絶叫。2日連続で正体をバラし、さらにマスクを取ることも要求した。もはやこれは「うっかり」でもなんでもない。
この発言の直後、マシンは銀のマスクを脱ぎ始め場内は騒然となったが、出てきたのは素顔ではなく黒いマスク。マシンはマスクを2枚かぶっており、「なぜ、俺がおまえに言われてマスクを脱がなきゃいけないんだ!」と、もっともな怒りを口にしてリングを降りた。これに対して猪木までもマイクを握り「おまえの正体は平田だ!」と言い出すなど、後楽園は猪木、藤波、観客が一体となってマシンにマスクを脱がそうとしたのだ。しかし、それでもマシンはマスクを脱がず、90年代半ばまで一貫して「スーパー・ストロング・マシン」として闘い続けた。
なぜ、マシンは素顔での活躍が期待されながらマスクマンを貫いたのか。そこには新日本に対する鬱積した怒りと男の意地があった。記事後編では、以前に筆者がインタビューした平田本人の証言とともに、あらためて平田がマスクを脱がなかった経緯を振り返る。《後編に続く》
