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ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「おまえ、平田だろ!」プロレス史に残る“珍事件”のナゾ…スーパー・ストロング・マシンの正体を明かした藤波辰爾は本当に「ウッカリ」だったのか?
text by

堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2025/05/17 17:00
40年前の「おまえ、平田だろ!」事件とは何だったのか?(ドキュメント前編)
藤波「うっかり本名を言っちゃったんだよ(笑)」
後年、藤波にインタビューした際、あの「平田だろ」発言をこう語っている。
「当時は今と違って、マイクアピールする機会ってほとんどなかったんですよ。でも、あの時はワカマツが何かをしゃべったあとリング上に置いていったマイクを無意識に拾っちゃったんだよね。それでマイクを持ったからには何か言わなきゃいけないし、目の前にはマシンがいるし。挑発的なことを何か言わなきゃいけないじゃない? それでうっかり本名を言っちゃったんだよ(笑)」
うっかり生放送中に正体をバラされたマシンはたまったもんじゃないだろうが、あの「平田だろ」発言は、藤波のうっかりだけではない背景も確実に存在した。
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当時、新日本プロレスは前田日明らUWF勢や長州力らジャパンプロレス勢など、選手の大量離脱が起こっており、スター選手の絶対数が不足していた。それを補ったのが、同じ無表情のマスクを被り1号から4号まで存在したマシーン軍団だったが、マシン1号だった平田は「4人のうちの1人」にしておくにはもったいない実力者であり、若手の頃は俳優の三浦友和に似ていると言われるなどルックスも良かった。
そのため飽きられ始めていたマシーン軍団を卒業して、素顔の平田淳嗣として正規軍の貴重な戦力となることが、ファンからも会社からも期待されていたのだ。藤波の「平田だろ」発言も、平田を素顔に戻して正規軍入りさせたいという会社の意向を反映したものと考えられる。

