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「猪木の顔を潰す気か?」タイガーマスク、前田日明…新間寿は名レスラーたちをいかに生み出した?“過激な仕掛人”がプロレス界に遺した功績 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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posted2025/05/20 11:01

「猪木の顔を潰す気か?」タイガーマスク、前田日明…新間寿は名レスラーたちをいかに生み出した?“過激な仕掛人”がプロレス界に遺した功績<Number Web> photograph by AFLO

新間寿の“仕掛け”によって生み出された初代タイガーマスク

 新間がそこまで執着したのは、失敗できない自分主導の企画だったことも大きな理由だっただろう。しかし当初はほとんどのファン、関係者が懐疑的だった、漫画のキャラクターであるタイガーマスクを実際のリングに上げるという企画があそこまでの大成功を収めたのは、佐山自身の才能だけでなく、強引なまでに企画を推し進めた新間の行動力なくしてありえなかったこともまた確かなのだ。

 そして藤波や初代タイガーの他に新間寿が見いだしたレスラーとして、もうひとり忘れてはならないのが前田日明だ。前田はもともとプロレスファンではなかったが、新日本の大阪遠征の際、前田の空手の兄弟子と親しくなった新人時代の佐山が「大阪に空手をやっている若くて大きな男がいますよ」と報告。それを受けてすぐさま前田を口説き、スカウトしたのが新間寿だった。

前田日明の証言「当時、俺は保護観察中だったんだよね」

 当時のことを前田はこう振り返っている。

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「俺は最初、新間さんに引っ張られたとき、『自分は空手しかやったことないから、プロレスなんて無理ですよ』って断ったんだよ。『それならアメリカに行って、モハメド・アリの弟子になればいい。ウチにはそのルートがあるから』って言われた時は心が動いたんだけど、当時、俺は18歳の時にバイク仲間と警官相手に暴れて保護観察中だったんだよね。保護観察中ってパスポート申請が下りないから、『俺、保護観察中なんでダメなんです』って言ったんだけど、そしたら新間さんが『そんなの俺がどうにでもしてやるよ』って言って、本当に俺の保護観察期間が終わったからね。

 当時、新間さんは有力政治家ともつながってたから、そういう力があったんだよ。だってさ、『明日、アントニオ猪木に会いに行こう』って言われて航空会社に電話して、『明日、何時何分の便に乗りたいんだけど』って言ったら、最初は『満席です』って断られたのに、『議員の番号の何番持ってるんだけど』って言ったら、『取れました』って急に席が取れちゃうんだから。『プロレスってすげえな』って思わされたよ」

【次ページ】 第1回IWGPの開催という一大イベント

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