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「侍ジャパン相手に6回1死完全」“台湾新星”古林睿煬が日本ハム3戦目のマダックスで覚醒か…巨人電撃移籍リチャードは悩ましい“二軍の大記録”問題
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/12 17:02
いわゆる「マダックス」で初完封勝利を挙げた日本ハムの古林睿煬(グーリン・ルェヤン/24歳)
台湾のプロ野球は、創設以来何度も野球賭博、八百長などの事件を起こして、国内での信用を失っていたのだ。このため陽岱鋼のように日本の高校を経てドラフトでプロ入りしたり、宋家豪のようにCPBLのドラフトを蹴って楽天と育成契約する選手もいた。
日本ハムは2019年、CPBLのLamigoモンキーズから王柏融を獲得した。王は、CPBLでは三冠王、打率4割を記録したスーパースターだった。筆者はこの年、沖縄県国頭村の日本ハム春季キャンプで王を見たが――打撃はともかく、守備では厳しいのではないかと感じた。果たして王は5年間NPBに在籍して15本塁打、打率.235と期待に応えられず、昨年からCPBL台鋼ホークスに復帰している。
楽天戦、6回2死まで完全試合ペースだった
古林は2019年、日本でいう高校からCPBL統一ライオンズにドラフト1位で入団した。3年目からローテーションを担ったものの、制球が良くなかった。しかし23年から成績が急速に向上。24年には1.66で最優秀防御率のタイトルを獲得した。
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そして2025年、日本ハムに移籍。筆者は王柏融の前例があるから、CPBLの成績はあてにならないと思ったのだが――。
〈今季の古林の投球成績〉
4月23日楽天戦 5.2回104球9安3四5振 責5●
5月1日ソフトバンク戦 7回103球5安1四10振 責2〇
5月11日楽天戦 9回98球2安0四7振 責0〇
ファームでは3戦3勝15.2回投げて防御率1.72と好投。しかし一軍デビューの楽天戦では先頭の小森航大郎をいきなり歩かせ、失策も絡んで初回に3失点、6回には浅村栄斗に3ランを打たれるなど7失点(自責点5)と散々だった。次戦のソフトバンク戦は再び初回に2失点したものの以後は零封。与四球はわずか1、奪三振10で初勝利を挙げた。
そして11日の楽天との再戦では6回2死までパーフェクト。小深田大翔に初安打を許し、7回にも中島大輔に安打を打たれたものの、8回、9回を三者凡退で締め、98球でマダックス(100球未満で9回完封)で2勝目を挙げた。
来年WBCで日本と同組…台湾のレベルアップを感じる
フォーシームは最速155km/h。カーブ、ツーシーム、スライダー、スプリットを駆使する。この3試合でしり上がりに成績を上げたことでわかるように古林の「修正能力」の高さには目を見張る。台湾でも弾道測定器ホークアイを駆使した投球動作の解析が進んでいるが、古林は日本ハムでもコーチやアナリストとともに動作解析をして、投球を修正していったのだろう。
古林は、規定投球回数に到達すれば、西武の今井達也、隅田知一郎、オリックスの九里亜蓮、ソフトバンクのモイネロなど、先発投手のタイトル争いに加わるだろう。さらには24歳の古林は、その先にMLBを志向している可能性もある。日本人選手と異なり外国人選手の古林は、FA年限などの拘束もなくMLBのオファーも受けやすい。

