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電撃トレード即ホームランの巨人リチャード…じつは二軍成績が“球史に残るレベル”「5年連続本塁打王は史上最長」「驚異の402試合88発」

posted2025/05/14 11:04

 
電撃トレード即ホームランの巨人リチャード…じつは二軍成績が“球史に残るレベル”「5年連続本塁打王は史上最長」「驚異の402試合88発」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

巨人に電撃トレード加入となったリチャード。ソフトバンク二軍時代の本塁打ペースはすさまじいものがある

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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ソフトバンクから巨人への電撃トレードが決まり、5月13日の広島戦でいきなり移籍後初ホームランを放ったリチャード。じつはファーム史上最長となる5年連続本塁打王に輝くなど「二軍時代の成績」は球史に残るものだった。書籍『野球の記録で話したい』(新潮新書)から一部再構成した転載でご紹介します。<全2回/第2回につづく>

「ファーム」の仕組み…ソフトバンクと巨人は三軍も

 MLBにもNPBにも「ファーム」があるが、その仕組みは大きく異なっている。MLBのファームは、ルーキーリーグなど球団直営のチームもあるが、大部分は別の経営者が運営する別個の球団だ。MLB球団は、ファームチームと契約(アフィリエイト)を結んでいる。MLB球団は、毎年7月のアマチュアドラフトで獲得した選手を、マイナー球団に送り込む。選手の年俸はMLB球団が負担するが、試合興行はファームチームが独立採算で行う。中にはファームで1万人以上の観客を集めるチームもある。また、アフィリエイトするメジャー球団を乗り換えることもしばしばある。

 これに対しNPBのファームは、2024年からできたファームだけの2球団(くふうハヤテベンチャーズ静岡、オイシックス新潟アルビレックス)を除いて、二軍、三軍(ソフトバンク、巨人)、四軍(ソフトバンク)のチームはすべてNPB球団直営だ。イースタン・リーグ、ウエスタン・リーグの試合運営は、イースタンをセントラル・リーグ、ウエスタンをパシフィック・リーグが行っている。つまり一軍丸抱えだ。

 ちなみにイースタン・リーグにオイシックス新潟が、ウエスタン・リーグにくふうハヤテベンチャーズ静岡が「参加」した(NPBに「加盟」したのではなく「参加」)のは、従来イースタンが7チーム、ウエスタンが5チームと、ともに「奇数」で試合日程が難しかったことが背景にある。ただこの2チームの選手の記録も、ファーム記録となっている。

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 そしてNPBのファームは採算を度外視して試合を行っている。広島はファーム本拠地の山口県由宇の球場(正式名は広島東洋カープ由宇練習場)では未だに入場料を取っていない。ソフトバンクのようにファーム本拠地のタマホームスタジアム筑後で「指定席」を販売している球団もあるが「ビジネス」はほとんど考えてないのが現状だ。

リチャードの“二軍通算本塁打ペース”が凄まじい

 そういう意味では「NPBのファームは本当にプロ野球なのか?」という疑問もわいてくる。しかし二軍にも公式記録員がいて、公式記録が積みあがっていく。NPBの公式サイトは2005年以降、一軍と同様の投打守備の公式記録を公開している。そこには、一軍とは異なる「野球人生」を感じさせるデータが存在しているのだ。

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