ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥を“最も苦しめた男”カルデナス「お金がなくて2年前までUberEatsの配達員だった…」29歳の壮絶ボクシング人生、井上尚弥から奪った“衝撃ダウン”
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph bySteve Marcus/Getty Images
posted2025/05/05 17:14
井上尚弥にTKO負けを喫したが、2ラウンド目でダウンを奪うなど下馬評を覆す善戦を見せたラモン・カルデナス。まさに人生を変える試合となった
RC 2年前までLyftの運転手やUberEatsの配達などをやっていた。とにかくお金がなくて、一文無しだったから、金を稼ぐためなら何でもやった。当時は彼女と同棲していて、生活に困っていた。それでもジム通いはやめなかった。ジムでのトレーニングから戻ると、急いで食事をとって、それから夜中の1時まで仕事をした。また朝早くに起きて、ロードワークに行く。それらを辛抱強くこなしたが、私がそんな日々を過ごしてきたことを人々は知らないだろう。私はインスタグラムに頻繁に投稿するわけではないし、有名なわけでもない。だから重要なのは、粘り強く挑むこと。人生がどんな困難を投げかけても、ただ前に進み続けることで私はここまで辿り着いたんだ。
「若さと時間を無駄にしているようだった」
――キャリアのターニングポイントはどこだったと思いますか?
RC 大きな転機は2023年5月に訪れた。そこで当時のマネージャーとの契約が終わった。前のマネージャーとは3年間組み、その3年で4試合しかできなかった。まるで若さと時間を無駄にしているようだった。そこで今のマネージャーであるマイケル・ミラーと契約し、マイケルは私のボクシング人生の軌道を変えてくれた。よりコンスタントに試合ができるようになったんだ。私のキャリアはそこから正しい方向に導かれ、今ここにいる。
ADVERTISEMENT
――分岐点となった勝利は2023年9月、プレミアケーブル局Showtimeで全米中継されたラファエル・ペドロサ戦の2回KO勝ちでしょうか?
RC その通り、ペドロサ戦の2回KO勝ちの意味は大きかった。それまで15戦全勝(11KO)だったペドロサとの一戦まで、誰も私のことを知らなかった。そこでKO勝ちし、「あいつはいったい誰だ?」と多くの人が私を認識してくれるようになった。
――その後の3試合はProBoxTVという中規模テレビ興行シリーズで行い、3連勝を果たしました。井上戦に到達するのに、ProBoxTVシリーズで戦って知名度を上げた効果は大きかったように思います。
RC 2024年2月、初めてProBoxTVのシリーズでイスラエル・ピカソと対戦した時の私はまだBサイドだった。当時30勝5敗、ナチョ・ベリスタイン・トレーナーに指導を受けていたピカソが優位と見られていたんだけど、私は彼の顎を砕いて負傷判定勝ち。WBCの挑戦者決定戦でもあったこの試合に勝ったあとでサンプソン・レコウィッツ・プロモーターと契約し、一緒にやっていくことになった。ProBoxTVのおかげで安定して試合ができるようにもなった。


