「大声で怒っても意味がない」甲子園優勝監督が球児との対話で実感「叱ると怒る…え、何が違うの？」仙台育英・須江監督が長年疑問に持つこと 

　多くの場合、自分が信じる規範やルール、常識から逸脱した行動を目にしたときに、「何をやっているのよ！」という感情が生まれてくるものです。わかりやすく言えば、自分が正しいと信じる「あるべき姿」の話。この「あるべき姿」と「処罰欲求」は密接にリンクしているため、他者の行動を許せなくなってしまうわけです。

　みなさんに考えていただきたいのは、しつけの項目でも述べましたが、その「あるべき姿」が本当に妥当で、子どもたちにとって必要なものなのかどうかです。私の経験上、「こうでなければいけない」という想いが強すぎる人ほど、〈叱る依存〉に陥りやすいように思います。

　人間の脳は非常に多様で複雑なので、全員に効果的な方法など存在しません。私たちが見ている世界の姿や感じ方は、一人ひとり違うものだからです。そもそもひとつの方法や考えだけで人を育てようとすること自体に、無理があるのです。そのことと私たちは向き合わなければなりません。

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　そこに考えを巡らせることができれば、「あるべき姿」に対する考え方も変わっていくと思います。「あるべき姿」、つまり自分の中にある「普通」「常識」「当たり前」を疑ってみることが、「叱る」を手放す第一歩です。このあたりは、本書の後半でさらに詳しく触れていきます。

須江監督が語る「怒る」と「叱る」の違い

《特別対談》

　村中の書いた『〈叱る依存〉がとまらない』の内容を講演会で紹介していただいているという縁がきっかけで、2022年夏の甲子園を制した仙台育英の須江航監督との対談が実現。須江監督とともに旧態依然とした叱る指導の問題点を考えてみたい。

©JMPA

――須江先生は、講演会では村中先生の著書のどのあたりを引用しているのでしょうか。

須江　「“怒る”と“叱る”の違い」をよく使わせてもらっています。指導者の立場からしても、一緒なんですよね。村中先生の説明にある通り、どちらにしてもネガティブ感情を植え付けて、相手をコントロールしようとする。その場では問題を解決できたとしても、日が経てば、また同じような行動を繰り返す。だから、怒っても叱っても、根本的な解決にはつながっていないんですよね。

　じつは自分が中学生のときに、指導者から「おれは怒っているんじゃない。叱っているんだ！」ときつく言われたことがあるんですけど、「え、何が違うの？」と思ったことを覚えています。

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