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「大声で怒っても意味がない」甲子園優勝監督が球児との対話で実感「叱ると怒る…え、何が違うの?」仙台育英・須江監督が長年疑問に持つこと
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村中直人/大利実Naoto Muranaka/Minoru Ohtoshi
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/05/10 17:01

夏の甲子園・優勝経験校である仙台育英の須江監督はどんなチームを作っているのか
村中 今日、初めて仙台育英の練習を見させてもらいましたが、選手が自ら黙々と取り組んでいて指導者からの怒声が飛ぶようなイメージがまったく湧きませんでした。
大きな声で怒っても、ほとんど意味がない
須江 大きな声で怒っても、ほとんど意味がないと思っていますから。事例のひとつとして、選手にこんな話をしたことがありました。
「夏の大会前、同じミスを繰り返しているチームに対して、監督であるぼくが『何回同じことをやってんだ。そんなことで勝てると思っているのか!』と怒ったとする。きみたちは従順で素直だから、きっと『ハイ、わかりました』と返事をするよね。監督からすると、怒ったことでピリッとした緊張感が生まれて、いい練習になってきたなと思うことがあるもの。
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その流れで、県大会で優勝したとしよう。インタビュアーから『チーム作りにおいて、どこがターニングポイントだったと思いますか?』と聞かれたときに、『夏の大会前に空気が緩いときがあって、そこで一喝したところ、チームが変わりました』と語ったとする。そこで成功体験を得た監督が、甲子園に入る前にもう一度緩みそうな空気を怒声で締める。きみたちはどう? しらけない? 怒られたことでモチベーションが上がったり、集中力が高まったりするものだと思う?」
ほぼ、全員がクビを横に振りますよね。自分自身の学生時代を思い起こしてみれば、多くの人が実感できる話だと思います。〈つづく〉
