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「スマホやYouTubeで選べるから…」夏の甲子園優勝監督は今ドキ球児に“叱る意味を感じない”「仙台育英は練習に自由度がある」深い理由とは
posted2025/05/10 17:02

夏の甲子園で初となる深紅の大優勝旗「白河の関越え」を果たした仙台育英。“今ドキの高校球児”に須江航監督はどう働きかけているのか
text by

村中直人/大利実Naoto Muranaka/Minoru Ohtoshi
photograph by
Hideki Sugiyama

指導者として「謝りたいと思っている」とは
村中 怒ることによって、(一見すると)物事がうまく進んだ経験は、多くの権力者がまた使いたくなる手法です。自ら歯止めをかけている指導者は、なかなかいないように思います。
須江 でも、実際には怒ったり、叱ったりすることもゼロではありません。プレーや取り組みに対して、語気を強めにして伝えることもあります。選手には前もって、「指導者とコミュニケーションにズレを感じているのであれば、どんな方法でもいいので伝えてほしい。こちらとしては、太陽が落ちる前に改めて説明したいし、謝りたいと思っているから」と話しています。
村中 実際に言ってくる選手はいますか?
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須江 はい、言ってくる選手もいますし、その後の1対1の面談で、「あのときの言葉の意味がうまく理解できなくて……」と聞いてくる選手もいます。
――完全なるトップダウンの組織だと、その質問もなかなか出てこないでしょうね。
須江 あとは、村中先生の著書を読ませてもらってからですが、強めにネガティブ感情を植え付けてしまったときには、しっかりと記録するようになりました。いつ、誰に対して、どんなことを言ったのか。こちらとしては、丁寧に説明をしたつもりでも、選手からすると「監督に怒られた」という感情だけが残ることもあります。それは、その後の選手のふるまいを見ているとわかることなので、より注意深くケアするようにしています。
叱ることの意味を年々感じなくなっている
――選手を育てていくうえで、叱ることに意味はありませんか?
須江 正直言って、選手たちを叱る意味を年々感じなくなってきています。こちらが叱ったところで、その気持ちや言葉が選手には伝わっていないんですよね。「叱られたことで目が覚めました。ありがとうございます!」ということはまずありません。言葉が刺さらない。何かが大きく改善することはほぼない。だからこそ、丁寧に説明することをより強く意識しています。
――その理由はどこにあると感じますか。