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「受験では数学が得点源に…」陸上競技のU20日本王者がなぜ「東大に現役合格」できた? “究極の文武両道”吉澤登吾が描く“どっちも選ぶ”未来図 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/04/30 11:07

「受験では数学が得点源に…」陸上競技のU20日本王者がなぜ「東大に現役合格」できた? “究極の文武両道”吉澤登吾が描く“どっちも選ぶ”未来図<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

昨年のU20日本選手権800mで優勝し、日本一に輝いた吉澤登吾。桐朋高から東京大学に現役合格できた「文武両道」のリアルとは?

 復帰戦で、その時点での理想に近いレースが出来たというのは朗報だ。

 800mは苦しい。一方で戦略が重要でもあり、ライバルとの関係性も絡んで、ストーリー展開はバラエティに富む。競技を続けていく中で、誰にでも理想のレースが突如として実現する。吉澤にとってはU20日本選手権で自己ベストを出した時のレースが目論見通りだった。

「スタートから600mまでイーブンペースで進めようと思っていました」

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 このレースにも驚かされた。吉澤は300m付近でトップに立つと、そのままラストまで押し切ってしまったのである。しかもタイムは日本高校歴代4位。誰かをペースメーカーとして使ったわけではなく、自分の力だけで押し切った強い勝ち方で、底知れぬ可能性を感じさせた。

「あの時は、600mまできれいにイーブンペースで行けました。600mから800mのラストも、気持ち、落ちているくらいで」

 たしかに1周目の通過は54秒で、ほぼほぼイーブンのペースで勝ったことになる。しかしその背景には仮説と練習での実験による「頭脳戦の勝利」が見て取れる。同じようなレースが大学で創造できるだろうか。

大学は陸上をする場…というだけではない!

 舞台は大学に移る。

 取材当日は、先輩の東大のライトブルーのジャージを借りて「これ、めっちゃ目立ちますね」と笑いながら、撮影に応じていた。 

 ただし、吉澤にとって東大は陸上をするだけではなく、勉強への「欲」を開放する場でもある。

「大学生活で楽しみなのは、勉強に対して、自分の能力を最大限に投下する熱量を持つ仲間に会えるだろうな、ということです。そういう環境に身を置きたかった。東大で授業が終わって『ちょっと分からなかったから、家で勉強しなきゃ』という声を聞くと、うれしくなっちゃうんですよ」

 いま、興味があるのは物理の分野。受験で得点源となった数学については、どうなのか。

「僕は受験の数学に関しては好きでしたし、入試では得点源にもなりましたけど、研究となると話は別です。数学の研究者にはクリエイティビティが必要ですから。現状でいえば、物理に興味がありますが、東大は1、2年生の間は教養課程で様々なことを学べるので、先入観を持たずに勉強に取り組んでいきたいと思っています」

【次ページ】 文武の多彩さ…「僕にとっては『どっちも』です」

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