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「ありがとう山瀬功治」敵チームから奇跡の横断幕…“J史上最長24年連続ゴール”山瀬功治は「わがまま移籍」でも、なぜサポーターに愛されたのか?
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/04/11 17:01

25年にわたるプロ生活に終止符を打つ決断をした山瀬功治(43歳)が、激動のサッカー人生を明かした
「チームの10番を背負わせてもらうなかで、周りに合わせるばかりじゃなくて自分がサッカーにおいて主導権を握っていく形にしていかなきゃいけない、という意識もあったんだとは思いますね。別に好き勝手にやらせてもらうってことではまったくなくて。今の自分が持っている一番の個性を出すことが、何よりチームにとって一番のプラスになるなって。だからその意味では変わったつもりもないんです」
チームにとって一番いいように、欠かせないパーツになる。どのクラブだろうが山瀬の姿勢は一貫しており、2017年からのアビスパ福岡時代には前線からボランチまで、指揮官の要望に応じている。
山瀬には大きな勲章がある。コンサドーレ時代、プロデビュー戦となった2000年5月、湘南ベルマーレ戦で延長Vゴールを決めて以降、J1、J2を通じて24年連続でゴールを挙げている。これは遠藤保仁と並び、J最長の記録となっている。
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「特にF・マリノス時代はこの位置でボールをもらったら、こういう形でシュートを打てるとか、どのようにシュートまで持っていくかということばかり考えていました。今ここで頑張って走ればビッグチャンスになるとか、何となく体に染みついてくる。ボールが来るかどうかは別として、チャンスになるのは分かる。(キャリア終盤に入ったとき)何回もそこに対するアクションが起こせないなかでどうやっていくか。経験の積み重ねがあったから、愛媛でもレノファでもゴールにつながったのかな、とは感じています」
妻・理恵子さんの存在とは…
愛媛時代の2020年9月、ホームでのFC町田ゼルビア戦で決めた「21年連続ゴール」はまさにベテランの味だった。裏のスペースに飛び出した味方の動きを見て、折り返しが来ると判断した山瀬はペナルティーエリア内で前に行くと見せかけて後ろにポジションを取り、マイナスに来たボールを左足で捉えてゴール左に蹴り込んだ。駆け引き、技術がそろった濃密な一発であった。
「毎年、ゴールしていることはもちろん分かっていましたけど、ほかに誰がいるとかは知らなくて。アビスパ時代に地元紙の記者の方にそれを取り上げてもらって、注目してもらうようにもなって。僕は元日本代表だったとはいえ、ワールドカップの大きな舞台を踏んでいるわけではないので24年連続ゴールという代名詞が一つできたことは良かったなって思いますね」
どのクラブでもチームのために働き、ゴールを挙げ、そしてサポーターからも愛されてきた。地域に溶け込むのも早く、山瀬自身も行く先々の町を愛してきた。そこには馴染みのない土地に一緒に飛び込んでくれた妻・理恵子さんの存在があった――。
