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「今後、スピードは求めません」DeNAのエース・東克樹が語った“捨てる勇気”「何でも聞いてください…後悔はしたくないですから」その理由とは? 

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村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byNaoya Sanuki

posted2025/04/05 11:05

「今後、スピードは求めません」DeNAのエース・東克樹が語った“捨てる勇気”「何でも聞いてください…後悔はしたくないですから」その理由とは?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2023年に16勝、24年に13勝を挙げ、名実ともにエースと呼ばれる存在となった東

 修正を重ねた14日の楽天戦。東は3度目の先発で4回を無失点に抑える。試行錯誤してきた修正は2回の途中から奏功し始め、明らかにストレートが蘇った。

 そして開幕前最終登板となる21日西武戦。初回からランナーを出しながらもピンチでギアを一段階上げ、真骨頂である勝負所での粘りを見せつつ、開幕にピッタリと調子を合わせてきた。

 捨てる勇気。想定外の事態にもバタつかず泰然自若。結果を真正面から受け止め、理想に固執せず、感覚やデータの数字を見ながら、引き出しを探り、ベストな選択をしていく。まるで試合をコントロールするように。

いつの間にこんなに堂々とした空気を身に纏うように?

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 これぞ、エースの貫禄。オフの騒動にも動じることはない。インタビュアーが文藝春秋の取材パスを下げていようと「なんでも聞いてください」とばかりに、どんと構える。いつの間にこんなに堂々とした空気を身に纏うようになったのだろうか。

「後悔はしたくないですから」

 以前からそんな言葉をよく聞いた。昨年の日本シリーズ第3戦。連敗から流れを掴んだ大事な登板だった。この試合の6回、バックネット裏の指笛に試合を止めて審判に止めるよう促した。ともすれば繊細すぎると言われてもおかしくない行動。東は試合後、「僕たちはこの一球に人生を懸けている。それをわかってほしい」。ハッキリと世間に向けて公言した。

「あそこで言わずに、負けていたら僕は絶対に後悔していた。初めての日本シリーズ。2連敗してからの3戦目。僕自身もCSで肉離れをしてからの復帰戦でしたから、非常に気合も入っていましたし、そこで集中力が削がれて打たれたら後悔しかないですから」

 後悔をしない生き方。それは追い詰められた逆境から得た教訓でもある。

 覚醒前夜、東は厳しい局面に立たされていた。

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