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「戦力外から開幕ローテへ」巨人・石川達也が先発要員に急浮上したワケ…MLB東京シリーズで鈴木誠也が「凄かったです」と絶賛したある球種とは?
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/29 17:02
MLB開幕シリーズのカブス戦で好投をみせた巨人・石川達也。3月30日の開幕第3戦での先発予定だ
「僕の場合はリリースポイントが高いので。左バッターの外角に逃げていくスライダーは、もう少しリリースポイントが低いサウスポーが使うボール。そこはカットでいくしかないんですね。でもカットを意識しすぎると、他のボールに影響が出てしまったりする」
石川の説明だった。
カットボールやスライダーを意識すると、知らず知らずに肘が下がり、他のボール、特に最大の武器であるチェンジアップにマイナスの影響が出てしまうということなのだろう。
チェンジアップ「左打者にも通用する」
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オープン戦の最終登板となった3月23日のロッテ戦。先発した石川は初回にいきなり3連打を浴び1失点。5回には連打と四球、暴投で2点目を奪われたところで交代となった。それでも4回3分の1で92球を投げて、7安打6奪三振で与四球2個という内容に本人は手応えをこう語る。
「92球、ここまで長いイニングを投げたこともなかったので、いい課題が見つかったなと思います。ただ左打者にチェンジアップが効くかなというところは、収穫があった。左打者にも十分通用する球だったので、甲斐さん(拓也捕手)と話しながら今後やっていきたい」
杉内コーチもこの内容に合格点だ。
「左にもちゃんとチェンジアップを使えていましたし、課題を1つクリアしたかなと正直思っています。コントロールもいいのでランナーを溜めることもない。そこはあまり心配はしていないですね。まずは今のピッチングでどれだけ通用するか。1週目、2週目とローテーション投手は回っていきますし、相手も研究してくる。そこでそれを超えていかなければならないので、そこですかね」
オーバーハンドから投げ込む真っ直ぐとチェンジアップというコンビネーションで、ストライクゾーンを左右の幅ではなく前後の奥行きで使えるのがこの左腕の真骨頂だ。
「今のセ・リーグでチェンジアップの使い手といえば、あえていうならヤクルトの石川雅規投手ぐらいですかね。でも、タイプとしてはちょっと違うし、そういう意味では他にいないタイプの投手だから面白いと思います」
村田善則総合コーチの石川評である。
戦力外通告から開幕ローテに指名
昨オフの戦力外通告から始まった石川のシンデレラストーリーは、3月30日のヤクルト戦から本番を迎える。
「開幕ローテに指名してもらって、チームで何十人もピッチャーがいる中の6人の中の1人に選んでいただいたので、そこはしっかり責任感をもたないといけない。ヤクルト戦はどういう打線がくるのか分からないですけど、粘り強く、次はしっかり5回を投げ切ってリリーバーに渡せればなと思います」
沖縄キャンプ中の古巣・DeNA戦で好投後に「(自分を)出したことを後悔させてやろうかな、とマウンドに上がった」と語った石川のセリフが話題になったのは記憶に新しい。
この負けん気もまた、石川がノムさんが投手の条件として真っ先に挙げた「強靭な精神力と体力」という条件を持つ証なのだろう。

