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「そのための布石だな、と」森保監督がフランス名門誌に語ったカタールW杯ドイツ戦“番狂わせの舞台裏”「感情の爆発はあまりないです」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/06/14 17:14
サッカー日本代表の森保一監督。昨夏、フランスの専門誌にカタールW杯ドイツ戦の勝利について語っていた
それまではカタールがエクアドル(0対2)に、イランがイングランド(2対6)に敗れ、自信を喪失していたアジア勢に、自分たちでも大国に勝つことができるという希望を与えてくれた。しかもサウジは、それまでずっと4バックでやっていたのに、試合中に3バックに移行した。いろいろなことがポジティブに捉えられました。
ホテルでのミーティングでも試合前のロッカールームでも、選手には『前半は0対1であれば、リードされても想定内』と伝えました。そういう状況で相手に支配されても、がまん強く粘り強くプレーする。まずは耐えて、忍耐強く自分たちのやり方を続けろと。
後半になれば、攻撃のギアをあげられる。三笘薫や堂安律や浅野……機動力とアジリティ、技術のある選手を投入して最後には……。100m走ではなく、マラソンで最後に差して勝つみたいなイメージを、選手には与えました。
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ロッカールームで選手たちは落ち着いていて、やるべき準備を淡々としていた。でも同時に熱い思いも感じていました。それはドイツが過去に何度もW杯に優勝し、輝かしい歴史を築いている中で、自分たちがどこか見下されていると感じたからで、最後に吉田麻也がこう言いました。「相手は俺たちが勝てるなんて1ミリも思っていない」と。だから見返してやろうという強い気持ちが伝わってきました。
ムシアラに混乱…もし前半で2点目が入っていたら
●前半
(20分過ぎから)押し込まれだしてから、ムシアラをどうケアするかが焦点になりました。4バックのまま対応しようとしたのですが、彼らは可変してきてムシアラの動きに守備陣が混乱した。
0対1のまま終わって欲しいと思っていました。0対1であれば、後半に修正できます。もちろん前半に修正するという選択肢もありましたが、改善できていたかどうかわからない。混乱のなかでピッチ外から指示しても、全体に伝わるとは思えない。5分・10分の中断があれば別ですが、後半一気に変える方がいい。だからしんどいけど今は耐えてもらおうと。
ドイツの2点目が、アディショナルタイム5分ぐらいにあってオフサイドで取り消しになった。たしかにオフサイドでしたが、あれが入っていたらとヒヤッとしました。後半に選手たちがエネルギーを保てるかどうか、パワーを持てるかどうかが、大きく変わっていたと思います。
“後半頭から先手を取れる”読みの背景とは
●ハーフタイム
後半の頭から先手を取りに行けると思っていました。ドイツに心の隙があったかどうかわかりませんが、対応は必ず遅れるという読みはありました。日本が多少は変えてくると予測するかも知れませんが、攻勢から守勢にまわりピンチが増えるまでは想定していないなと。

