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甲子園制覇の高校No.1捕手“まさかの指名漏れ”の裏側で…「正直、自分は指名されないと…」ヤクルト“ドラ4指名”同級生の現在「寿命の長い選手に」 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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posted2025/03/07 06:00

甲子園制覇の高校No.1捕手“まさかの指名漏れ”の裏側で…「正直、自分は指名されないと…」ヤクルト“ドラ4指名”同級生の現在「寿命の長い選手に」<Number Web> photograph by Fumi Sawai

昨春センバツ優勝校の健大高崎からヤクルトに入団した田中陽翔。チームには「高校No.1捕手」箱山遥人も在籍したが、指名漏れ。明暗分かれる結果となった

 決断に至るまでは、もちろん多くの葛藤や苦悩はあった。

「大学のこともあったので、悩みました。でもいずれはプロの世界に行きたいと思っていましたし、早く挑戦するのもありなのかなと思ったんです」

 昨年積み上げた経験値を、今後に繋げたい。否定された、と思ったまま先に進むのだけは嫌だった。だからこそ、納得した道を歩きたい。志望届を提出するのは、ある意味、未来に向けた“賭け”のような部分もあった。

「正直、指名されないと思っていた」

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 ただ、決死の思いで志望届を提出したとはいえ「正直、かからない(指名されない)と思っていた」という。それでもわずかな可能性を信じ、ドラフト会議の会見場でその時を待った。その隣には、高校生ナンバーワン捕手とされた箱山もいた。

「箱山が先に指名されて、その後に自分が指名されたらいいなと思っていたんです。でも実際は自分が呼ばれて、箱山は呼ばれないまま終わって……。自分としてはまったくの想定外でした」

 ヤクルトから4位指名を受け、マスコミ対応のため肩車に乗った田中の写真撮影は行われた。だが、胸中は複雑だった。一緒にドラフト会議を見守った箱山とはどんな表情で対面すればいいのか。何とも言えない気持ちに駆られていると、声を掛けてきたのは箱山だった。

「気にするなって。お前は頑張っていたんだからって。僕が気を遣っているのを分かってそんな風に言ってくれたみたいです。僕としてはそう言ってくれたのは嬉しかったですけど……最後まで僕からは声は掛けられなかったですね」

 田中が後で聞いた話では、ドラフト会議が終わり、一旦2人で会見場を出た後、チームメイトが待つ部屋へ箱山がひとり足を向けていたのだという。

「そこで箱山がみんなに『今日はごめん!』って謝りに行ったらしいです。みんなの前では平静を保っていたみたいですけど、実際は相当落ち込んでいたと思いますよ」

【次ページ】 「いずれはプロの世界で戦いたい」

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