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「拷問を受けているよう…」監督の退任決定→西武選手たちが大歓声でバンザイ…伊東勤(62歳)が今明かす「一番嫌だった」記憶とは?
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伊東勤Tsutomu Ito
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/01 11:01
西武の監督に就任し、記者会見する広岡達朗(中央)。左は根本陸夫管理部長、右は宮内巌球団社長
そのしんどさを解消してくれたのが、日本一になった瞬間でした。
日本一を勝ち取ったときに、やってきたことは間違いではなかったんだと、あらためてみんなが認識したと思います。
先日、かつてのチームメイト・工藤公康が「当時の広岡野球を思い出すと、やっているときは苦しかったけれど、自分が監督になったとき、やっぱりすごく参考になりました」と言っていました。
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この年齢になって、自分たちが指導者の立場を経験して、やっと理解できたというのはあります。
ただし、また広岡さんの下でやりたいかと問われれば、やりたくないという人がほとんどでしょう。私もそうです(笑)。
嫌がらせのようなゴロ捕球練習
キャッチャーはワンバウンド捕球の練習なども繰り返し繰り返し行います。中でも一番嫌だったのは、ゴロ捕球の練習でした。外野手はまた違う練習になると思いますが、キャッチャーと内野手はこれを延々とやらされました。
300球くらい入った箱が用意され、1球ずつコーチが私の正面に手で投げて転がします。私はそれを捕って、送球します。それだけです。それを1箱終わるまで繰り返します。
簡単な練習のように思えるかもしれませんが、まだ左右に振られるノックのほうが楽なんです。ダイビングキャッチの練習でもしていたほうがずっと楽しい。
この正面ゴロ捕球をずっと続けてやっていると「もうわかったよ、できるから勘弁してくれ」「なんでこんなことやらせるんだ」と、いろんな感情が湧き起こってきます。 嫌がらせでもされているかのような、拷問でも受けているような、そんな気持ちになってきます。
でも、これがものすごく大事なんです。
腰を落としてゴロを捕って、ステップして送球する。その一連の動作を、狂いなく固めるための地道な作業。一切の妥協を許さず、この動作を体に染み込ませる。それによって、当たり前のことを当たり前にやれるようになっていくのでした。
