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「他のクラブからオファーなかった?」“ちょっと意地悪な問い”に東京ヴェルディ城福浩監督の反応は?「答えになっているかわかりませんが…」
posted2025/02/26 11:02

J1日本人最年長監督の城福浩(63歳)が、東京ヴェルディの今季の展望を語った
text by

近藤篤Atsushi Kondo
photograph by
Atsushi Kondo
感動的なほど変わった選手のプレーぶり
江尻の取材から、時間は1日逆戻りする。名護での3日目、ヴェルディは名古屋グランパスと黄金森陸上競技場でトレーニングマッチを行った。
ちょうど1年前、同じ競技場で両者は対戦している。その時の試合では、ヴェルディはレギュラーメンバー、対する名古屋は控え組、いや正確には控え組のさらに控え組中心のメンバーだった。グランパスはその前日マリノスとの練習試合を行ったばかりで、この日の試合はヴェルディの要望に名古屋側がなんとか応えてくれて実現。わずか2カ月足らず前にJ1昇格を決めたヴェルディは、練習試合をやってくれる相手を見つけるのにも四苦八苦していたのだ。結果は4-1でヴェルディが勝ったが、内容は乏しかった。格下のチームがゆるい空気の中で、たまたま格上相手に勝っただけ、という類の試合だった。
それから1年、互いにレギュラー組でスタートしたトレーニングマッチの1本目、ヴェルディは名古屋を相手にほぼ互角の試合を演じ、見事なパスワークから先制点を決める。J1でのワンシーズンを経て選手たちの顔つきが変わったように、選手たちのプレーぶりも(これまた感動的なほど)すっかり変わっていることに、僕は少なからず感動する。
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ところが2本目は一瞬の隙をつかれて一気に3失点、前半の出来が帳消しになってしまうような内容だった(それはまさに昨シーズンの前半戦でヴェルディが見せていたような光景だった)。ちょっと気を抜けばすぐにこうなるのがJ1でサッカーをやるということだ。
続く3本目は選手を次のセットに入れ替えたヴェルディが2−0でリードし、4本目はお互い無得点で0−0だった。
ただ、うまくいかないゲームの中でも、名古屋の控え組はレフェリーに対してあからさまな苛立ちをぶつけていたが、ヴェルディの選手たちは黙々とプレーに集中していた。城福ヴェルディの基本は、文句を言ってる暇はない、倒されてアピールする暇があったら、その1秒でもう5m走れ、がこの段階で浸透していた。
結果はトータルで3−3の引き分け。数字だけ見れば昨年よりも悪いのだけれど、ピッチの中に漂う予感、残した印象で言えば、昨年は「?」だったけれど今年は「!」となる。
「いや、慢心しちゃダメっしょ」
その日の夕方前、僕は先にホテルに戻って撮影セットの前で選手たちを待つ。昨年のホーム最終戦、川崎Fを相手にDFとしてハットトリックを決めた谷口栄人が通りかかったので、僕はさっき目にした名古屋戦の印象を口にする。
――みんな、びっくりするほど成長したね。
背番号3は特に嬉しそうな顔もせず、むしろキツめの視線を返して、さらっと答える。
「いや、慢心しちゃダメっしょ」