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「東京ヴェルディに城福浩を呼んだ男」江尻篤彦はなぜ“確信”していたのか?「自分から一番遠くにあるクラブ」と固辞されるも再度オファーしたワケ
posted2025/02/26 11:00

東京ヴェルディの強化部長を務める江尻篤彦。城福浩監督を呼んだ人物がそのオファーにいたる秘話を明かした
text by

近藤篤Atsushi Kondo
photograph by
Atsushi Kondo
“J1の顔つき”になったヴェルディの選手たち
「簡単にいうと、やはり勝てるチームにしたかった、J1に上がりたかったんです。だから城福さんに頼もうと。で、3年前の冬に一度オファーをさせていただいたんですが、断られました。こちらとしては準備万端のつもりでいたんです。だから、断られたときはショックでしたよ。そこからさらに半年後、城福さんはまだフリーの立場にいたので、もう一度オファーをさせていただきました。今ある中でいいものは残しつつ、(かつて城福さんがいた)青でもなく、(かつて自分がいた)黄色でもなく、この緑色を、もっと良い緑色に一緒に変えていってほしいんだと。そういうアプローチをさせてもらいました」(東京ヴェルディ強化部長・江尻篤彦)
1月の最後の週は沖縄の名護市にいた。
毎朝、市街地の外れにあるホテルを出て、21世紀の森にあるグラウンドで東京ヴェルディのトレーニングを撮り、そのあとは彼らの宿泊先ホテルのロビーにセッティングした撮影セットで、シーズン開幕に向けたビジュアル用に選手たちのポートレートを撮る、そんな1週間だった。
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毎年、新しいシーズンが来るたび、どんなサッカークラブでもメンバーの顔ぶれは大きく変わる。うまくいかなかったクラブだと半数近くが入れ替わったりもする。しかし2025年の1月、カメラの前に立つヴェルディの選手たち、特に主力だった選手の顔ぶれは前年度とほぼ変わらなかった。
変わったのは、彼らの顔つきだ。1年前はまだ「J2の顔」をしていた若者たちが、すっかりJ1の顔つきになっていた。自信、そして強い決意、その変化は感動的といっていいほどだった。
「来年の開幕前も沖縄に行くんですか?」
Numberの編集者からたずねられたのは、沖縄にむけて羽田を発つ1カ月ほど前のことだった。たぶん行くことになると思う、と答えると、じゃあまた東京ヴェルディのことを書きませんか、と提案された。聞くと、昨年末に掲載した城福浩監督のインタビュー記事が思いのほか好評だったらしい。
僕にはその記事が面白いものになることは予めわかっていた。 J1で最低水準のバジェット,そんな予算のクラブがリーグ戦の6位につけている、しかもそのクラブはついこの間まで瀕死の状態でJ2を彷徨っていて、平均年齢24歳のとても若いチームを率いるのは日本人最年長監督だ。しかもそのクラブの名前はかつての名門、東京ヴェルディ。面白くならないわけがないじゃないか。
21世紀のサッカーシーンでは「メガクラブVS巨大なクラブ」、つまりゴリアテとゴリアテの激突を好むファンの数が圧倒的に多くなったけれど、やはりダビデとゴリアテの対戦を見たいし、ダビデの戦略を知りたい人だってまだたくさんいるだろう。
「城福浩に監督をやってもらおう」と決めた人物
さて今回は誰に話を聞こうか。もちろん城福監督にはインタビューをしたいが、もう一人、実を言うとこの1年間、ぼくはずっとこの人の話を聞いてみたいと思っていた人がいる。