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「他のクラブからオファーなかった?」“ちょっと意地悪な問い”に東京ヴェルディ城福浩監督の反応は?「答えになっているかわかりませんが…」
text by

近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2025/02/26 11:02

J1日本人最年長監督の城福浩(63歳)が、東京ヴェルディの今季の展望を語った
江尻強化部長へのインタビュー直前、僕は同じ部屋の中で今度は城福監督に話を聞いた。沖縄での城福監督は、やはりいつものように朝から晩までずっと最大値で仕事をし続けている。いったいこの人はいつ休んでいるんだろうか? そんな疑問が頭に浮かんだ。
城福監督への「ちょっと意地悪な問いかけ」
――昨年の最終戦が終わってから、ゆっくり休息はとれましたか?
「えっと……シーズンが終わって1週間後にシンガポールに飛んで、いろいろご縁があったあちらのサッカー指導者の仕事ぶりを確認したり、他の関係者にレクチャーを行ったりと、新シーズンの始動までの間、ゆっくりしたのは正月の三が日だけですかね。人間ドックはちゃんとすませましたけど」
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マグロやサメが泳ぎ続けないと生きていけないように、きっと城福浩という人もサッカーに毎日関わり続けていないと逆に体調がおかしくなってしまうのかもしれない。
2番目の質問は、ちょっと意地悪な問いかけだ。
――あれだけの仕事をやってのけた監督に、他クラブからのオファーはなかったんですか?
もちろん監督はそんな質問にはっきりと答えるわけがないし、僕も元々期待していない。
「ご質問の答えになってるかどうかわかりませんが、資金を潤沢に使って、最高の選手に三顧の礼をもって来てもらう。そういうチームには、そういうチームなりの大変な苦労があるんです。失敗すると、ものすごく大きなハレーションが起こる。結局、どの道を辿って山に登っても、しんどいのはしんどいんです。じゃあ、山頂を目指す時に、どのしんどさが自分にとって一番充実感があるのか、と。私はもちろん全てを経験している訳ではありませんが、私の知っているしんどさの中では、今の山の登り方、このヴェルディというチームで感じている苦労、やりがいが一番自分らしいのかな、と。そんなふうに思います」
城福浩という人間は、答えようのない質問にもしっかりと向き合い、けっして無駄な時間に終わらせない。
昨シーズンを6位という素晴らしい数字で終えた東京ヴェルディはオフシーズン、木村勇大、山見大登、林尚輝、そして染野唯月という期限付き移籍だった4人の選手を完全移籍で買取、残りの主力選手とも(福岡に移籍した見木をのぞいて)全員契約更改に成功。加えて、新たにジュビロ磐田からは平川怜と鈴木海音、そしてガンバ大阪から福田湧矢と、これまた若手の実力派を獲得した。
「他クラブからの話をもらった選手たちはたくさんいましたよ。私も最後に、いくつものオファーがあった選手、『迷っています』という選手に会って話もしました。その言葉がどれだけ大きかったのか、それは僕が語ることではないと思います。私の言葉なんてただの言葉でしかないから。大事なのは、彼らがヴェルディでの日々をどう過ごしたか、それまでどう感じていたか、だと思います。経験豊富なコーチングスタッフと共に練り上げた練習の内容であったり、その研ぎ澄まし方であったり。彼らから見た納得感や充実感。移籍の結論も、結局は日々の積み重ねが導き出すものなんですよね」
情熱があれば、コーチ同士でもぶつかる
東京ヴェルディのスタッフ陣の充実ぶりはJ1でも屈指のものだから、と城福浩は自負するし、他チームの関係者の意見を拾っても、練習中にそれぞれのコーチがこれだけ声を出しているクラブは他にない、という。