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「プロレスは今しかできない」“100万人に3.5人の難病”とも向き合いながら…スターダム・向後桃が語った覚悟「病気だから諦めるのってイヤなんです」 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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photograph byEssei Hara

posted2025/01/24 17:03

「プロレスは今しかできない」“100万人に3.5人の難病”とも向き合いながら…スターダム・向後桃が語った覚悟「病気だから諦めるのってイヤなんです」<Number Web> photograph by Essei Hara

難病を抱えながらプロレスラーとして生きる向後桃。「ベルトを取って海外でも戦いたい」と意欲を見せる

「麻優さんは基本、常に優しい。でも、本当に自分がダメ過ぎた時はびっくりするくらい厳しく言われる。今回じゃないですけど、その場でも泣きそうになりましたし、家に帰ってからもメソメソしていました。ダメな自覚はあっても、どれをどう直せばいいかわからなかったし、変える力がなかった。今は何をどう変えよう、と思えるようになった。前より変えていく力がついてきた。“生きている”って何だろうな。『ここをこうしよう』と考えて試合に臨むことが多かったけれど、それって“生きている”わけじゃない。考えるより、感じて動くこと。それができないと感情が出てこない。そのスタート地点にもたどり着けない」

“100万人に3.5人”の症例でも「それも含めて自分」

 趣味について訊いてみると、楽しそうにこう答えた。

「趣味? プロレス観戦なんです(笑)。テレビにつないでいるのはNJPW WorldとWrestle Universe。ABEMAやNetflixで恋愛バラエティ。家ではいつもプロレスか恋愛バラエティが流れています。テレビのチャンネルは使ってないですね。私の中ではABEMAがテレビ。ニュースは1.5倍速で見られるから。『今日、好きになりました。』って、高校生が恋愛するのがあるんですよ、2泊3日とか3泊4日くらいで。スターダムの中ではNetflixの『あいの里』とか『ボーイフレンド』も流行ってましたね」

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 向後は少女のような表情を浮かべた。

「いつかこういうデートがしたいなあ。よみうりランドに『今日、好きになりました。』で見たHANA・BIYORIっていうお花のテーマパークがあるんです。夏、プールに行ったときイベントに参加したら1位になって、いっぱいチケットが当たったんです。女子だけど(平井)杏奈ちゃんと行ってきました。きれいですごかったなあ。いつかデートしたい場所のリストに入っているので、今度は相手を見つけて行きたいです」

「顔は『気が強そう』って言われるんですが、たぶん、そんなに強くない。強かったらいいのになあと思う。免疫の病気では症例の少ないレアなケースで、100万人に3.5人。くじ引きなら大当たりですね。でも、きっと大丈夫です。治療していますから。今までは、病気でいろんなことを我慢してきた。みんなでご飯行ったり、出かけたり、年末年始でも『お酒飲んでる場合じゃないな』とか思っていて。でも、来年も元気に過ごせる保証なんてないとも思ったんで、大晦日はウィロー(・ナイチンゲール)とカウントダウンもしました。プロレスをやめることは考えたことがなかったんですけど、『もしかしたら』というのが頭をよぎって。(タッグリーグの時)これが麻優さんと組めるラストチャンスかもしれないという思いをリングで言ったら、物議を醸してしまいましたけど。バセドウ病は薬でコントロールできるけれど、膠原病は進行を止められるだけ。それを言うと『ベルトが遠ざかる』と思ってあまり言っていなかったんですが、希望がある方だけ言って、難しい方は言わないのは『ずるいな』と自分に思うようになった。それも含めて、自分だと思ってます」

 そう言いきって向後は微笑んだ。筆者は「向後桃は強いなあ」と感じた。向後は「生きている自分」を、確かに感じているようだった。

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