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「プロレスは今しかできない」“100万人に3.5人の難病”とも向き合いながら…スターダム・向後桃が語った覚悟「病気だから諦めるのってイヤなんです」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/01/24 17:03
難病を抱えながらプロレスラーとして生きる向後桃。「ベルトを取って海外でも戦いたい」と意欲を見せる
「病気だから諦めるのってイヤなんです」
「最初に見た日本のプロレスはスターダム。プロレスと出逢ったのが2018年。それまでプロレスにまったく関心がなかった。スポーツ観戦は好きだけれど、プロレスって身近じゃなさ過ぎて。サッカーとかは体育でやるじゃないですか。プロレスは見る機会がなかったです。野球みたいにテレビでもやっていないから。見たことないから興味がなかった。大半の女子は見たことないから興味がないんだろうな。もちろん、最初はやるつもりはなかったです。アクトレスガールズの代表にたまたま声かけてもらったんです。普通に面白くてハマって、いろいろ見に行くようになって、舞台の演出家さんとアクトレスの代表がつながっていて『この子、運動神経いいんだよ』って。それで『プロレスやってみないか』って言われて。その時、すでに病気だったんですが、だいぶ動けるようになっていたので、やるなら今しかないな、と思いました」
「何一つ諦めたくない」と向後は言葉に力を込めた。
「病気だから諦めるのってイヤなんです。ベルト、めっちゃ欲しいです。ハイスピードと、(岩谷)麻優さんとのタッグでベルトが欲しい。ゴッデスが欲しい」
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向後は岩谷に強く憧れている。
「麻優さんの試合に感動しちゃったんです。自分が苦しいときに勇気をもらった。こんなすごい人が、最初はポンコツって言われていたなんて。私もポンコツなので、重ねて勇気をもらいました。麻優さんってすごいなあ、生きているなあ……。なんか用意されたものじゃなくて。プロレスラーっていっぱいいるけれど、“生きている人”ってそんなに多くはない。私はようやく息をしだしました。プロレスで息をするって何だろう、って思っていた。外から見ているとわかるけれど、やろうとしてもできなくて。ハイスピードのベルトを取ったら海外で防衛戦がしたい。私はひとりで海外に行けるので。日本のハイスピードは世界でもハイスピードだと思っている。メキシコでもアメリカでもちゃんと防衛して戻ってきたい。自分でも不思議なんですけど、そういう国に行くとアドレナリンが出ているから体、大丈夫なんです。メキシコのルチャは人々の生活の一部なのがいい。アメリカは華やかで、会場のチャントも強い。どっちもいいなあ。叶うならどっちも何カ月か行ってみたい」
海外での体験を語るとき、向後は生き生きとしている。
「免疫が強すぎるから、下痢しないんです。メキシコではシャワーですら下痢すると言われています。うっかり宿泊先のウォーターサーバーの水を飲んだら泥の味がしました。『絶対食べちゃダメ』と言われた屋台でフルーツも食べました」