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「プロレスは今しかできない」“100万人に3.5人の難病”とも向き合いながら…スターダム・向後桃が語った覚悟「病気だから諦めるのってイヤなんです」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/01/24 17:03
難病を抱えながらプロレスラーとして生きる向後桃。「ベルトを取って海外でも戦いたい」と意欲を見せる
向後桃が向き合った症状「交差点を渡る体力も…」
12月24日、後楽園ホールで向後はハイスピード選手権にチャレンジした。星来芽依の牙城は高く、向後の願いが自身のクリスマス・プレゼントになることはなかった。
「病気がどんなに悪くても、試合している時は平気なんですよ。日常生活では指が曲がらなかったり、ヒザが曲がらないとかあるんですけど。アドレナリンが出ると、痛くないし動ける。その後ドーンって(反動が)来るかというと違う。ロープが握れる。アドレナリンってすごいなあと思う。発熱している時はさすがに『体が重いな』って時があるけれど、できないこともない。39度とかだとダメですけど」
向後はバセドウ病と、膠原病などいくつかの難病と向き合っている。
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「体がおかしいとは思っていなかったんです。自分が怠け者なだけだと思っていた。すぐ疲れちゃって寝てばっかりで、起きている時も背筋を伸ばしていられない。ずっとうつ伏せ。交差点を渡りきる体力もなかった。だから信号が青でも一度座って休んでから、次の青になった瞬間に頑張って渡っていました。病気は健康診断で見つかったんです。甲状腺がでっぱっちゃっていた。基礎体温は37.2度と高めでした。検査しましょう、それで、バセドウ病。その時、まだ膠原病は発覚していなかった。いつからかはわからないですけれど、よく考えたら、中高生の時からあったのかもしれない」
向後は自身の病気について話を続けた。
「バセドウ病は昨年、寛解したんです。もう薬も止めて飲んでいません。何カ月か経ちます。いきなり、体力がガクンと落ちるのが減ったかな。その分、膠原病が悪くなっている。自分の免疫が自分の全身を攻撃してくるんです。膠原病は進行性なので止めることしかできない。昨年の5月ごろが最悪でした。今は持ち直しているかな。痛みで眠れない。ずっと発熱。基礎体温が38度なんじゃないのかなと思った。(テーブルとか)こういう所にちょっとぶつけただけでも激痛。涙を流してもだえる。骨折したこともあるけれど、それ以上の痛さ。悲観はしていないです。定期的に病院には通っていて、その時の状態に合わせて自己注射などの治療はします。大学病院の先生にも『この病気で運動している人いないよ。どうなっているんだろうね。ボクも長く診てきたけれど……』と不思議がられました。でも人生懸けてやりたいことがプロレスなので、全部全力で頑張るしかないかなって」
そう言うと、向後は子どもの頃の話を語ってくれた。
「すごく活発な子どもだったんです。外に出るとずっと遊んでいる。一輪車とか好きで、得意でやっていました。学童保育でやっていたんですが、そこにオファーが来て、他の所の学童に一輪車を見せに行っていた。両足をペダルから放して、タイヤの上を歩いたりしていました」