濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「芸能人に何ができる」批判も…大河出演女優・向後桃が辿り着いた“約束の地”「私はスターダムでプロレスがしたい」《特別グラビア》
posted2022/02/22 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
今年からスターダムに参戦している向後桃は、デビュー直後にある“隠し事”をしていた。
初めてのリングは2019年4月30日のアクトレスガールズ後楽園ホール大会。五十嵐乃愛とのシングルマッチに敗れ、インタビュースペースで試合の感想や今後の抱負を語る。その時に挙げていた憧れの選手は「WWEのアレクサ・ブリス選手とロンダ・ラウジー選手。日本ではLeonさんが好きです」。
だが本当はそれだけではなかった。スターダム、とりわけ岩谷麻優の大ファンだったのだ。団体同士の交流がないので言い出せなかったそうだ。今回のインタビューでも感じたが、向後は常に周りに迷惑がかからないように、誤解を招かないようにと気を遣って話す。でも今なら言える。
「どんなプロレスラーになりたいかって言ったら、もう(岩谷)一択です。体は細いのに、やられてもやられても立ち上がる姿がかっこいいですし、スピード感もある。感情の広がりも凄いんですよ。リングの上で“生きてる!”っていう感じが伝わってくる」
その岩谷を、今は「麻優さん」と呼べるようになった。岩谷が率いるユニット「STARS」のメンバーになったのだ。2月23日のアオーレ長岡大会では、同じSTARSの羽南が持つフューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦する。今、彼女は「画面の向こう」だと思っていた世界にいるのだ。
「めちゃくちゃ幸せです。毎日幸せです(笑)」
もともとは大河ドラマにも出演する女優だった
もともとは芸能活動をしていた。だが喜怒哀楽、すべての感情をまっすぐぶつけることができる場所はリングしかないと感じた。
「たとえば演技でも泣く場面はありますけど、それは“泣かないようにしているのに涙があふれてしまう”といった表現になるんですよ。でもプロレスはダイレクトに感情が出る。むき出しです。それが凄く魅力的ですね。ある試合で負けて泣いた時、ふと目に入ったお客さんも泣いていたことがあって。感情がぶつかり合ったり交わったりもするんです」
2016年度のミス湘南グランプリ。役者としては『いだてん』、『麒麟がくる』と、小さい役ながら大河ドラマ2作品に出演、昨年は主演映画も公開された。活動が軌道に乗り始めたところだった。だが、それ以上にのめり込んだのがプロレスだった。
「だから覚悟を持ってスターダムに来ました。ここが、今の私のすべてです」