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「書くに堪えない暴言が逆側で」久保建英への“人種差別ヤジ”現場で何が…撮影取材で見た背景「簡単に言い表せないけど」スペイン人も寂しそうに 

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中島大介

中島大介Daisuke Nakashima

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2025/01/25 17:00

「書くに堪えない暴言が逆側で」久保建英への“人種差別ヤジ”現場で何が…撮影取材で見た背景「簡単に言い表せないけど」スペイン人も寂しそうに<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

バレンシアの本拠メスタージャで“人種差別的ヤジ”を浴びた久保建英。現場で撮影するカメラマンが見聞きしたリアルとは

 その様子がソシエダのメディアチャンネルで流されたことで、大きく物議を醸した。現地で撮影していた立場からすると、ソシエダ選手のアップゾーンである南西ゴール裏サイドは、そのタイミングで撮影していた北東のポジションとは真逆だった。

 その撮影位置から、現場で久保に向けられた悪意に気づくことはなかった。スタジアム全体からの反応ではなく、久保の間近にいた一部のサポーターのものだったのは一つの事実である。前述したように聞こえてきたのは「Cuidado」の表現、つまり単純に〈プレーヤーとしての久保〉に対する脅威から発せられた罵声だった。

知人スペイン人が寂しそうに語ったこと

 とはいえ——。

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 以前にもメスタージャでは、レアル・マドリーのブラジル人代表FWビニシウスに対して人種差別的ヤジが飛ばされ問題になっている。残念ながら、純粋にサッカーを楽しむためではなく、憂さ晴らしのためにスタジアムに通う者がいるのもまた、現実である。

 特に失業率が13%近いスペインでは、外国人によって自分達の仕事が奪われていると感じている人も多く、バレンシア州でも極右政党が徐々に人気を高めている背景もある。

「簡単には言い表わせないけど……独裁政権からの流れでバレンシアにはファシストが多いんだよ、だからメスタージャで人種差別が起こるのはおかしくない」

 こう寂しそうに、今回の出来事を話してくれたスペイン人もいた。

久保には活躍で黙らせてほしいと思うとともに

 久保には自らの活躍で、間違った行為をするものたちを黙らせてほしいと思うと共に――どんな理由があったとしても、スタジアムから人種差別が撤廃されなければならない。そのためには各クラブの対策だけでは足りず、リーガとして地道な対策を取っていくしかない。

 個人的に、スペイン生活は15年ほどになる。人懐っこく、陽気なスペイン人が多い。時に嫌な思いをすることもあるものの、時間をかけて徐々に改善されてきた部分も多く感じる。

 またこのバレンシアも、地中海沿いの穏やかな気候で、日本でも馴染みのパエージャ発祥の地でもあり、食も美味しい。

 この取材前にも、折角なので本場のバレンシア風パエージャを楽しんだ。さらにウナギも名産で、ウナギのアリ・ペブレ(バレンシア語でニンニクとパプリカ)を食することができた。

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